左側が祝園分屯地。右側が国会図書館や企業、研究所、ニュータウンがある学研地域(撮影:松本博)
司令部の地下化が計画されている海自・舞鶴地方総監部の正面ゲート

 自公政権が「戦争する国づくり」を強引に押し進めるなか、総選挙(27日投票)は、大軍拡路線に審判を下すチャンスです。敵基地攻撃能力行使を可能にした安保3文書に基づき、イージス艦へのトマホーク配備などが決まった海自・舞鶴基地(舞鶴市)や、長距離ミサイル保管のための大型弾薬庫新設が計画されている陸自・祝園分屯地(精華町、京田辺市)の周辺住民から大軍拡に対する不安の声や、一貫して軍拡路線に反対してきた日本共産党への期待の声が上がっています。

「軍都」舞鶴に逆戻りを懸念

 「今、進行していることは、戦前の軍事基地に戻すようで恐ろしい」と不安を口にするのは海自・舞鶴地方総監部から500㍍圏内に住む80代女性です。

 舞鶴は戦前、鎮守府が置かれ、軍需工場もあった「軍都」でした。旧海軍の施設は海上自衛隊に引き継がれました。舞鶴地方総監部の隣には住宅地が広がり、公民館や市役所もあります。総監部の敷地から約100㍍の場所には、市立保育所の新設も予定されています。

 ところが、岸田・石破自公政権の大軍拡のもとで、核兵器などの攻撃にも耐えられるように舞鶴地方総監部の地下化が計画され、総監部周辺にも弾薬庫建設が可能か調査する予算も来年度予算で計上され、「戦前に戻す」動きが進んでいるのです。

 住民を不安にする大軍拡は、岸田政権が2022年12月、閣議決定した安保3文書に基づくもの。安保3文書は、集団的自衛権行使を容認した安保法制をさらに進め、「反撃能力」の名で違憲の敵基地攻撃能力の保有を決定し、23年度から5年間で43兆円という空前の防衛予算を支出しようするものです。

 敵基地攻撃能力を保有するために、「12式地対艦誘導弾能力改良型」(射程1000㌔)やイラク戦争などで使われた「米国製トマホーク」(射程1600㌔)をはじめ、中国や北朝鮮の都市を攻撃可能とする射程2000㌔~3000㌔のミサイルの大量導入・開発を計画しています。

 防衛省は、今年1月18日、米国製トマホークを購入する契約を米政府と締結。契約額は約2540億円で、最大400発を25年度から27年度に納入する予定です。これらの長射程ミサイルを保管するための大型弾薬庫新設(全国約130棟)をはじめ、長射程ミサイル搭載可能な戦闘機、護衛艦、潜水艦の大増強も計画しています。

 敵基地攻撃能力について、23年1月11日の日米安全保障協議委員会(2+2)の共同発表では、「米国との緊密な連携の下」で、米国が構築してきたシステム(「統合防空ミサイル防衛」)に基づき行うことが示されました。米国のシステムでは、公然と先制攻撃を行うことを宣言しています。

 反撃も予想されることから、防衛省は、全国の基地の強靭(きょうじん)化を進め、とくに主要司令部などの地下化、主要施設を核兵器、化学・生物兵器などによる長期的な攻撃にも耐えられる対策を計画しています。

 国内が攻撃される可能性について日本共産党の穀田恵二前衆院議員は、23年2月6日の衆院予算委員会で質問。浜田靖一防衛大臣は一般論としながらも「大規模な被害が生じる可能性も完全に否定できるものではない」と答弁するなど、日本全土が戦争で焦土と化すことが想定されているのです。

左側がトマホーク配備が計画されているイージス艦「あたご」

イージス艦にトマホーク配備

 府内では、安保3文書に基づき、自衛隊各基地の強靭化が計画されています。敵基地攻撃能力行使に向けた拠点として整備が計画されているのが舞鶴基地と祝園分屯地です。

 舞鶴基地は、核攻撃などを想定した司令部地下化の整備、同基地に所属するイージス艦2隻へのトマホークミサイルの配備が計画されているほか、弾薬庫新設に向け、今年度は「舞鶴弾薬整備補給所」(舞鶴市長浜地区)内に3棟整備するための調査費約2億円が計上され、25年度の予算案では、海自舞鶴地方総監部の隣接地でさらに増設が可能かを検討する適地調査の費用が計上されています。

 同市内には自衛隊関係者も多く住んでいます。元自衛隊員の男性は、「反撃能力の保有やそれにもとづく軍備増強は行き過ぎ。専守防衛であるべきで、これまで憲法9条に隊員の命を守られてきたと今になって感じている」と語ります。

 政府が、日本周辺の安全保障環境の悪化を挙げて大軍拡を進めていることについて、元自衛隊員は、「緊張緩和は、貿易など経済面でのつながりを深めるなど、両国の交流の強化により解消すべき。戦争はしてはいけない」とくぎをさします。

 舞鶴地労協、新婦人舞鶴支部、舞鶴平和委員会は、トマホーク配備、司令部地下化などに反対し、署名や宣伝を行っています。

 祝園分屯地では、長距離ミサイル保管のための大型弾薬庫8棟の新設が計画されており、23年度に調査費4億円、24年度に工事費102億円、25年度には工事費192億円が計上されています。

 祝園に弾薬庫が造られたのは戦時中。大阪府枚方市の禁野火薬庫が爆発事故を起こしたことから、急きょ建設されました。地主は、目的も知らされず、半ば強制的に土地を奪われたのです。

弾薬庫「拡張しない」確認書交わす

 戦時中、奈良電鉄(現・近鉄)狛田駅で、電車が米軍機に機銃掃射されるのを見たという80代の男性(精華町)は、「日本政府は沖縄で住民にうそをつき、自衛隊施設を建設し、祝園でも分からないうちに弾薬庫を建設しようとしている。国のやり方は戦前も今も同じ。信用できない。戦争は絶対に反対。共産党にがんばってほしい」と言います。

 祝園弾薬庫が自衛隊に移管される際、町ぐるみの反対運動が起こり、1960年、町と国との間で、「施設の拡張はしない」とする確認書を交わしました。

 弾薬庫新設は、施設の拡張となります。住民は「京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」を結成し、計画の住民説明を求め、集会、署名、申し入れをしてきました。

 日本共産党の倉林明子副委員長・参院議員と山添拓参院議員は今年2月22日、堀川あきこ・衆院近畿比例候補(京都2区重複)や地元議員と舞鶴基地や祝園分屯地を視察。かみじょう亮一・京都6区候補も祝園分屯地の調査に参加しました。

 山添議員は、参院外交防衛委員会で、穀田恵二・前衆院議員は、衆院外務委員会で、住民説明会の開催と確認書に基づき計画の中止をそれぞれ求めました。

庶民は物価高苦しむ中、一発「5億円」に憤り

 南西諸島での自衛隊基地建設をめぐる状況を追ったドキュメンタリー映画『戦雲(いくさふむ)』の上映会を京田辺市で友人と企画した女性は、「国民は物価高で苦しんでいます。1発5億円、6億円もするトマホークを400発も買うなら子ども食堂などにまわしてほしい。トマホーク1発で1束300円のコマツナを160万束以上買えます。軍事費を増やすより生活の防衛のほうが大事です」と語ります。

 安保3文書に基づき、岸田政権の下でこの間、戦争準備のための法整備が強行されました。

 英国とイタリアとの次期戦闘機共同開発条例をはじめ、陸海空自衛隊の部隊運用を一元化する統合司令部設置法、基地周辺住民を監視する土地利用規制法などです。これらに反対してきたのは、日本共産党です(表参照)。

 「憲法9条京都の会」事務局長の白土(しらと)哲也弁護士は、「残念ながら大軍拡や戦争準備の法整備に一貫して反対している政党は少数です。大軍拡とともに、ジェンダー平等も含めて憲法の大原則である平和主義、基本的人権の尊重、国民主権を徹底して守る勢力を国会で大きくすることが、危険な流れを止めるために必要です」と語ります。

ASEANと協力 9条生かした平和外交を

日本共産党総選挙政策

 日本共産党は10日に発表した総選挙政策の中で、「日米軍事同盟絶対の『戦争国家』づくりを止め、外交の力で平和をつくります」として▽「軍事対軍事」を激化させ、平和も暮らしも壊す大軍拡をストップさせます▽軍事同盟強化に反対し、東アジアの平和をつくる外交に全力をあげます─などと訴えています。

【日本共産党に期待】

軍事一辺倒は短絡的

沖縄平和連帯京都南部の会会員 神田高宏さん

 「中国や北朝鮮は何をするか分からない。攻撃してくるかもしれない」などと国民に不安をあおり、岸田内閣は、敵基地攻撃をも可能にする安保3文書を閣議決定し、安保3文書にもとづき祝園弾薬庫に長距離ミサイルを保管するための大型弾薬庫を建設する計画が浮上しました。

 非民主的な中国のありように疑問はもっていますが、だからといって長距離ミサイルを配備し、NATО加盟国の軍隊も招いた日米合同演習などを行い、軍事対軍事で対応するのは逆効果で、事態を悪化させるだけです。

 戦争になれば双方に死者が出ます。武力衝突に至らなくても貿易が止まれば双方に経済的打撃は大きい。軍事一辺倒の政策はあまりに短絡的でお粗末です。

 一貫して反戦・平和を訴え、憲法違反の安保3文書や長距離ミサイル配備などに反対するとともに、外交による平和を提唱している日本共産党にがんばってもらいたいです。(精華町)

 

〝戦争させない〟最大の力

獣医師、「平和動物診療所」所長 大槻孝夫さん

 綾部市出身で、神奈川県相模原市で平和動物診療所を開きました。今年6月、綾部に戻って同じ診療所名で開業しています。

 京都を離れている間、京丹後市に米軍基地が建設され、さらには舞鶴でミサイル配備や弾薬庫建設などが計画されています。本当に驚くとともに、身近な場所で着々と戦争準備が進んでいることを実感しています。

 進学先の相模原の大学の真横には、米軍の相模原総合補給廠がありました。その当時、補給廠では、ベトナム戦争で壊れた戦車を修理してベトナムへ送り返していました。これを阻止する住民運動が展開され、私も参加していました。

 診療所名は、「かわいそうなゾウ」に象徴される理不尽な死をもたらす戦争に反対の意思を示そうとつけたものです。日本共産党は戦前から戦争に反対し、絶対に起こさせないため外交による解決を一貫して訴えています。個々の政策の中でも、最も大事なのは平和を実現して国民の命を守ることです。この部分で最も信頼できるのが共産党です。(綾部市)