萩原氏(左から3人目)らを交えてマイナ保険証一本化について議論した市民フォーラム(10月26日、京都弁護士会館)

萩原博子氏「患者、医療機関に多大な負担が」

 政府が12月2日から現行の健康保険証の新規発行を停止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に原則一本化するとしていることを受け、京都弁護士会、京都府保険医協会、京都府歯科保険医協会の3者は共催で10月26日、健康保険証廃止中止を求める市民フォーラムを京都市内で開催。「健康保険証の存続を求める」共同アピールを採択しました。

 同弁護士会の岡田一毅会長があいさつし、「3者による共同企画は初めてのことで、健康保険証を廃止させないための私たちの決意の表れだ。廃止反対へ広くアピールしていきたい」と訴えました。

 1部では、経済ジャーナリストの荻原博子氏が講演しました。

信頼性低く利用率11%

 荻原氏は、今までは健康保険証1枚持っていけば済んだことが無理なマイナ保険証への一本化で患者、医療機関に多大な負担をもたらしていると告発。医療現場でのシステム障害でトラブルが続出するなど、マイナ保険証の信頼性の低さから、「政府が利用促進を図ってもマイナ保険証の利用率は7月で、11%程度にとどまっている」と批判しました。

 健康保険証の廃止にともない、政府はマイナ保険証を保有していない人には保険者から「資格確認書」が交付されるとしていることに言及。自治体の中には、マイナ保険証を保有している人も含め全被保険者に資格確認書を送付する方針を決めているところもあると述べ、「保険証が資格確認書となるだけで、一体何のためのマイナ保険証なのか」と訴えました。

 政府がマイナ保険証へ移行する狙いは医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進にあるとし、「マイナ保険証で集めた個人の医療情報が、製薬会社などに提供されることになる」と批判しました。「それ自体が問題の上に漏えいの危険もある」と指摘。「健康保険証の廃止は、デジタル庁のトップダウンで決まったものでしかない。現行の健康保険証を無くさない運動を続けていこう」と呼びかけました。

保険医協会アンケート「トラブル・不具合」7割近く、「保険証残すべき」8割に

 2部で各分野からの発言が行われました。府歯科保険医協会の平田高士副理事長は、府保険医協会と合同で会員を対象に実施した、マイナ保険証に関するアンケート(8月)結果を報告。資格確認などのトラブル・不具合について、「あった」との回答が68%に上り、健康保険証について「残すべき」とした人が80%に達したことを上げ、「健康保険証存続で、国民皆保険制度を守ろう」と訴えました。

 京都社会保障推進協議会の松本隆浩事務局長は、府内の各自治体に行った資格確認書についてのアンケート(9月)結果を報告しました。

 被保険者のマイナ保険証保有状況を把握している市町村が半数にとどまっていることを上げ、12月2日からの「実施体制」としては「極めて不安」と指摘。市町村からも実施について、「国からの提示が遅く、膨大な事務量を求められることや市民からさまざまな問い合わせがあることなどから、困惑、不満の声が聞かれた」と述べました。

 同保険医協会の渡邉賢治副理事長は「健康保険証廃止に反対する運動は政府を追い込んでいる。さらに保険証残せの世論を広げよう」と述べました。この他、同弁護士会の松尾美幸弁護士、社会福祉法人七野会の井上ひろみ氏が発言しました。

 主催した3者による「共同アピール」が採択され、「市民の命と健康、そして権利擁護の見地から、健康保険証の存続を」と呼びかけました。