「暗黒の時代」許さない思いあらたに 宮本百合子「播州平野」から〈いま〉を読み解く/文芸評論家・澤田章子さん講演 日本共産党京都文化後援会
日本共産党京都文化後援会は10月26日、同党京都府委員会(京都市中京区)で、文芸評論家の澤田章子さんを講師に招いた講演会「宮本百合子の『播州平野』が語りかける 今」を開きました。同後援会の初めての講演会企画で35人が参加し、意見交流しました。
宮本百合子(1899~1951年)は戦前、プロレタリア作家同盟に参加し、非合法だった日本共産党に入党。文化人に及んだ弾圧で自らも獄中生活を体験しながら、治安維持法違反で投獄された夫の宮本顕治(同党中央委員会元議長)と書簡で交流を続け、敗戦を迎えました。
「播州平野」は、歴史の転換期となった敗戦時の日本の社会状況や庶民の暮らしの実態をみつめた、百合子の戦後初の作品。治安維持法により夫を獄に奪われた妻という主人公に自身を投影し、戦争によって破壊された国民生活と、国家権力の本質を治安維持法による弾圧の側面からも描くと同時に、あるべき社会に向かう発展の可能性を示唆しています。
澤田さんは、世界に戦争が広がり、いま日本も軍拡に走る時代の中で、「反戦・平和のため命をかけてたたかった宮本百合子から学んでいきたい」と口火を切りました。作中、敗戦の日を描写した有名な表現、「日本じゅうが、森閑として声をのんでいる間に、歴史は、その巨大な頁(ページ)を音もなくめくったのであった」を取り上げ、「百合子でないと書けなかった文章。多くの人の共通の思いが表現されている」と紹介。
また、夫を徴兵された女性たちをいたわるまなざしやGHQによる占領下の描写から読みとれる百合子の人間性、戦争につながる政治動向に敏感に発言した生き方にふれて、「憲法改悪、大軍拡など国民の問題を追及しつつ、百合子の文学とたたかいに学び、文化・芸術の力に民主主義を育てて、世界の平和を求めよう」と話しました。
参加者からは、「来年は戦後80年、治安維持法制定100年の節目。身近な歴史に人権、民主主義を学び、ふたたび暗黒の時代を許さない思いを新たにした」「新しい戦前にさせないことが私たちに問われる」などの発言がありました。