家を学校を壊し、井戸にコンクリート・・・イスラエルによる占領の実態 パレスチナ人とイスラエル人の共同監督で撮影/『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』 3月20日まで、京都シネマで上映中

米アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞受賞
パレスチナとイスラエルの若き制作者が、ヨルダン川西岸パレスチナ人居住地でのイスラエル軍による占領の実態を告発したドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』が米アカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞しました。京都では、3月20日(木・祝)まで、京都シネマ(京都市下京区)で、上映しています(21日以後の続映未定)。
作品の舞台はイスラエル軍の支配下にあるヨルダン川西岸マサーフェル・ヤッタ地域。イスラエル側は同地域を自らの軍事訓練場だと宣言し、長年住んできたパレスチナ住民を強制に立ち退かせ、イスラエル人を入植させています。
イスラエル軍は突然現れ、住民が泣き叫ぶなか、ブルドーザーで住宅を破壊し、住民が共同して造り上げた小学校校舎も・・・。井戸にコンクリートを流すなど生活手段を奪っていきます。抗議行動をすれば指導者を逮捕。銃殺されることもあります。住民は、不衛生な洞窟で生活せざるを得ません。軍に擁護された入植者は、銃を手にパレスチナ住民を容赦なく襲ってきます。入植者を送り込み、住民から土地を奪うイスラエルの国際法違反の占領政策の実態をあぶりだしていきます。
撮影は、おもに2023年10月までの4年間にスマートフォンや手持ちカメラで行われました。現場で撮影し、自らも被写体となっているのはパレスチナ人のバーセル・アドラーとイスラエル人のユバル・アブラハーム。
バーセルは反占領活動家の両親の下で生まれ育ちました。ジャーナリスト、活動家、ドキュメンタリー作家として故郷の強制立ち退きと闘っています。ユバルは、エルサレムを拠点に活動するイスラエル人の調査ジャーナリストです。
2人は、イスラエルの不当な住民強制立ち退きや不平等な事態を変えようと、同じ目的で活動する友情の絆で結ばれますが、バーセルは軍法の下で暮らし、西岸地区に閉じ込められているのに対し、ユバルは民法の下で暮らし、どこへでも自由に行き来できます。強制立ち退きの事態が進行するなかで地域の人々からユバルに厳しい言葉がかけられるようになるなど2人の関係は試練にさらされます。しかし、自らSNS上にアップした記事のアクセスが伸びないといらだつユバルに対し、粘り強く取り組むことが大切だと諭すバーセル。同じ目的に向かって取り組む姿に一筋の希望が見いだされます。
本作の制作は、同地域在住の写真家で活動家でもパレスチナ人のハムダーン・バラールとエルサレムを拠点に活動するイスラエル人撮影監督で、編集者、ディレクターでもあるラヘル・ショールが加わり、4人で行われました。
4人は本作に込めたメッセージについて次のように語っています。
「本作がきっかけとなって、イスラエル軍に国際社会から圧力がかかり、マサーフェル・ヤッタの占領が終結することを願っています。そして、それを訴えているのが私たちパレスチナ人のイスラエル人のグループであるということが、世界への強い呼びかけになることを。今すぐに占領を止めることと、パレスチナ人とイスラエル人の両者が平等に主権を持つ、自由で新しい枠組みを生み出す政治的な解決策が必要です。それしか前進する道はないのですから」
上映時間=13日(木)まで①10時15分②18時15分、14日(金)~20日(木・祝)13時35分、京都シネマ(下京区烏丸通四条下ル水銀屋町620 COCON烏丸3F)☏075・353・4723。一般1900円、60歳以上1300円、大学生・専門学校生1100円、高校生以下・障がい者1000円。割引は要証明。