人々の心に明かりを灯したい 展覧会「畠中光享 日本画展 清浄光明を描く―はじまりと今―」 相国寺承天閣美術館 6月22日まで

インド美術の研究者で、「京都民報」に連載「私の好きな絵」を執筆中の日本画家・畠中光享(はたなか・こうきょう)さんの初期作と最近作100点を紹介する展覧会「畠中光享 日本画展 清浄光明を描く―はじまりと今―」(主催=相国寺承天閣美術館・日本経済新聞社、協力=MBSテレビ)が相国寺承天閣美術館(京都市上京区)で開催中です。7日には、開会式と内覧会が行われました。
開会式では、佐分(さぶり)宗順館長(臨済宗相国寺派宗務総長、銀閣寺住職)と畠中氏があいさつ。佐分館長は、「私どもの臨済宗はインドから中国へ座禅を伝えた菩提達磨(達磨大師)によって始められた宗派で、中国の文化や宗教の影響を多大に受けている。畠中画伯は仏教発祥の地、お釈迦(しゃか)様誕生の場所インドに身を置いて、作品を生み出してこられた。非常に新しい視点で我々の仏教を見る機会を与えていただけると期待している」と述べました。
同日誕生日を迎えた畠中さんは、「ご縁があってここまでやってこられた。ありがたい。『物事は移りゆく、怠らず努力せよ』がお釈迦様最後の説法。それを思ってできる限り努力したい。楽しんで見てください。(作者は)何を考えているのかと思いながら見てください」と語りました。
佐分館長、畠中さん、日本経済新聞の今川京子常務取締役がテープカット。京都在住のパーカッショニスト渡辺亮さん(東京学芸大学非常勤講師)の演奏も行われました。
展覧会の副題、「清浄光明(しょうじょうこうみょう)」とは、弥陀如来(あみだにょらい)の光明が分け隔てなく人々を照らすとの意味。格差が進み、救済されない人々が多い現代、絵画で少しでも多くの人々の心に明かりをともせればと願い制作したといいます。
畠中さんは奈良の真宗大谷派の末寺に生まれました。高校時代に洋画家・香月泰男(かづき・やすお)氏にあこがれるとともに、日本画家・入江波光(いりえ・はこう)氏の弟子に絵を学びました。
僧侶になるため、大谷大学で日本仏教史を専攻しますが、4回生(1969年)のとき、当時の政治的高揚を題材にして初個展開催。これを機に画家になることを決意。香月氏に会い、作風は体験に裏付けられたもので真似はできないことを悟ります。身の回りのものや自画像を描いていましたが行き詰まり、向かった先がインドでした。寺院、美術館、展覧会、仏教関連の遺跡などを巡るとともに、飢餓に苦しむ人々の救済などにも参加しました。
インドの細密画や染織などを研究するなかで、線と鮮やかな色による平面の芸術が絵画の原点であると知り、日本画の復興を目指して制作を続けてきました。発色が良く、退色・変色しない画材も探求し、独自の画風を確立してきました。
展覧会では、初個展に出品した作品や学生時代に住んでいたアパートを描いたものなどの初期作品をはじめ、祇園精舎などの史跡などを描いた作品、バナナ供養やマンゴー供養をテーマにしたもの、達磨が祈っている姿や禅定の姿で描いた作品などの最近作が見られます。
前期=4月20日(日)まで、後期=4月23日(水)~6月22日(日)。いずれも午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。一般1000円、大学生600円、高中生300円、小学生200円。同館☏075・241・0423。なお、3月15日(土)・5月3日(土・祝)・31日(土)午後1時半から、同館2階講堂で畠中氏の講演あり。先着80人。要入館料。