生きた植物の博物館―府立植物園を守った運動の記録 住民団体が出版『こうして京都府立植物園は守られた』
「京都府立植物園整備計画の見直しを求める会」(なからぎの森の会)はこのほど、運動の経過や京都府立植物園(京都市左京区)への思いなどをまとめた著書『こうして京都府立植物園は守られた――市民が開くコモンズの未来』(かもがわ出版)を出版しました。
同会は、府立植物園の開発計画や、同植物園に隣接する京都府立大学敷地内での1万人規模のアリーナ建設計画などが盛り込まれた、府の「北山エリア整備基本計画」(2020年12月策定)の見直しを求める市民らで結成。植物園北山門前での宣伝を計128回行い、植物園を守ることを求める署名を17万1000人分集め、シンポジウムや学習会を繰り返し開催するなどの精力的な活動を展開しました。
府は23年2月、植物園の開発計画の「見直し案」を発表し、計画はとん挫。24年3月にはアリーナを向日市に建設する案を発表しました。
著書では、運動に取り組んできた市民や元植物園長、府立大学の学生など24人が、運動の経過や植物園への思いなどを執筆。植物園の魅力の紹介や、ニュースの発行、ネット署名やSNSの活用など運動を行う上での工夫などについてつづられています。
同計画の見直しを求め、21年に記者会見した元植物園長らがコラムを執筆し、「生きた植物の博物館」である植物園の魅力や同計画の問題点について述べています。
出版にあたり、編集委員6人を中心に同会のメンバーが25回にわたって編集委員会を開き、出版費用には357人から寄付が寄せられました。
同会共同代表の鯵坂学さん(同志社大学名誉教授)は、向日市でアリーナ建設計画が進められていることについて、「向日市でも計画の撤回を求めて市民運動が広がっており、私たちも連帯していきたい」と強調。計画がとん挫しても、府は「北山エリア整備基本計画」は撤回していないとし、「旧総合資料館跡地の活用や、府立大の老朽校舎の整備が具体化していないなど、まだまだ課題があり、運動を継続していきたい。京都府内各地で、行政や企業によるまち壊しが起こり、市民運動が広がっています。私たちの体験を伝えていくためにも、多くの人にこの本を読んでほしい」と話しています。
購入希望の方は、kbgsuport@gmail.com まで。
A5判、207ページ。1600円+税。