おさんしんぽ 家庭分娩の魅力 高橋律子さんの報告(3)
これまで、このご主人は、数時間でお母さんが赤ちゃんを産んだから、ごく簡単に産んだかのように受け止められていて、「今度こそお産を実感して欲しい」とお母さんが家庭分娩されたんです。
家だと、やはり緊張感がなくて、9時ごろから陣痛が始まったんですが、ご主人は居眠りしておられたりすることもありました。なかなか生まれなかったんです。朝4時、5時ころになっても生まれなくて、結局18時間かかりました。はじめはご主人は緊張感がなかったんですが、涙、涙のお産になりました。「どんな命も簡単には生まれないんだよ」と、みんなでお産を体験することができたんですね。
2年生の長女のおねえちゃんが「おかあさんありがとう」と思わず泣いてしまったんですね。お姉さんがやさしい手で赤ちゃんをなでてあげてあげていました。
家庭分娩というのは、親子とか夫婦とか家族がハラハラしながらも体験して、絆を実感するものだと思います。お産を体験することで人間関係の質が深まるなと思っています。そういうものをもっともっと大切にしてほしいと思います。
オランダの家庭分娩のようすです。隣のおじさんに見せているんです。笑顔をみてあげてください。あかちゃんが生まれてくる力があるのを体感するのがすごく大事だと思います。お母さんが、赤ちゃんに生まれてくる力、育つ力があるのを感じる体験になるでんす。
これは水中分娩されている方です。水中分娩ではトランス状態になるんです。本当に気持ちいいんです。エンドルフィンが出て、陣痛を乗り越えて、自分が力を出し切って、汗も涙も鼻水も全部出し切って、一種の浄化作用なんです。女性は一皮むけて、お産は心のデトックスだと思うんです。
お産というのは痛いとかつらいとかいうことじゃなくて、こういうお産の目に見えない精神的な価値をみんなに知ってもらいたいと思います。
みんながお産はこうありたい、と声を上げていくことが大事だと思います。
産科の立場からすると出産の際の死亡率だとか、目に見える指標がいま、世の中がリスクインフォメーションとしていっているんですけれども、お母さんたちにはお産のリスクも知ってもらい、同時にお産のすばらしさも偏りなく知ってほしいと思います。その上で自分で産み方を選び取っていただけたらうれしいと思います。