龍谷大平安高硬式野球部創部100周年記念試合観戦記(4)芳村智裕
両校が7年前の夏の甲子園準々決勝で対戦したというのは、最近の出来事なので覚えている人も多いのかもしれないが、さすがに第24回長崎国体(1969年)で再試合を行ったこと、対戦した事実ですら詳しく知る野球ファンはなかなかいないだろう。おじさんはこういう経緯を聞いてほしかったとばかりに、さらなる情報を提供してくれた。
7年前のその準々決勝では試合後、平安・原田監督が「絶対に負けてはいけない相手に負けた」とコメントしたのだという。センバツ大会で3連敗している話は、昭和も初期のことで「これはさすがにわからない。平安のOBでもわからないはず」と言いながらも、この頃から元号や世紀、さらに校名までが変わっても両校がライバル同士だということについては、一歩も引かない調子だった。
松山商が目の前でプレーしているせいかやはり、商業高校の時勢が気になる様子で今春のセンバツに出られるとしたら、「前橋商、高崎商、…高松商…そんなもの」と以前と比べてずっと少なくなった残念さを嘆いた。
試合はいつの間にか四球で満塁となり、続く6番がレフト前にタイムリーヒットを放って、1回裏に平安が先制点を挙げた。
「(甲子園に)出場しても公立は勝てないから」と平安に先制点が入って、口調も変わってきた。
野球部の強い高校に(中学の)ボーイズリーグからの伝統ができあがっていること、(時代は)もはや守備中心の野球ではなく「“松坂”クラスじゃないと抑えられない」という打撃中心の野球などを挙げて、松山商を含む全国の公立高校の「ふがいなさ」よりもむしろ昔とは全く異なってしまった私立高校優勢の「不公平さ」に文句がある様子だ。
「広島商は今もバントにスクイズの“スモールベースボール”を続けるしかない。松井や清原のような長打力のある高校生は来ないから」。
木製バットから金属バットの時代に変わって、何年が経つのだろうか。昔が懐かしいか名残惜しいか、今現在行われている高校野球の試合というものに疑問を感じざるをえない状況だと言いたいのか。
昔と今とでは作戦面でも攻撃方法でも全く違ってしまうのだろう。さすがに木製バット時代を引き合いに出されては今の「高校野球」そのものがどうあるべきかという話題になってしまうのだが。
「愛媛は済美か今治西か。今治西は公立でも進学校。早稲田大学に進学する選手もいる」。今日から東京・神宮球場で明治神宮野球大会が開幕。そのことに触れながら「センバツはPL学園が優勝かな。監督も代わったから」と西京極だけを見ている様子ではなく、全国の他球場の結果も気になるらしかった。(つづく)
(写真=松山商・先発ピッチャー)