太郎冠者である私がなぜ、この車の上にいるのか、それはもうじっとしておれなくなって衣笠さんの応援にかけつけたからなんです。
 今、ひたひたと我々に忍び寄ってきているもの、それは憲法改正、9条をなくそうというとんでもない悪巧みです。私は戦争体験者で、戦争にも行ったことがあるんです。学徒動員です。戦争末期に兵隊が足らなくなった時に、文化系統の大学生はもう卒業まで、待てない、もう全部兵隊にいくんだと、徴兵検査を受けまして、戦地へおいやられました。
 ちょうど私が軍隊に行く時、町内会が日の丸の旗を振って私を送ったわけです。当時歌われていたのは、「露営の歌」という軍歌でした。その中にこんな歌詞があります。「夢に出てきた父上に死んで帰れと励まされ、覚めてにらむは敵の空」。露営をしていて眠っていた時に見た夢で、父親に死んで帰れと励まされた、そういう軍歌をはやらせていた時代、兵隊は死ぬのが使命、天皇陛下のために死ぬのが使命と教育され、そういうことが押し付けられた時代に私は無理やりに兵隊にいかされたんです。そのとき、町内会の偉い方たちは「立派に死んでこい」というようなことを大きな声でいったわけですね。
 最後に私はもう行くというその瞬間、女の声を聞きました。「まあちゃん、死なんと帰ってや」。母親でした。それは母親の声でした。私の母は国防婦人会の役員です。変なことをいうとすぐに非国民と言われた時代です。みんなが聞いている真ん中で母は「死んで帰ったらあかんで」。そういう言葉を発したんです。これは母の力ですね。それに感激しまして、泣いてはいけないと思いながらも涙が出ました。
 衣笠さんの応援に駆けつけましたのは、衣笠さんは母なんですね。母の中の母ですね。今の日本には母の愛が必要じゃないでしょうか。みなさん、夫や息子、孫を戦争にやりたくないでしょ。戦争というのは人殺しですよ。人を殺しに、殺されに行くんですよ。1人だったら刑罰に処せられますが、団体の戦争で殺したら名誉になったりする。そんな時代がこないためにも、9条を守ろうという衣笠さんに府知事になってもらいたい。
 そして日本の政治が悪い方向へむかうのを止めてほしい。そして我々の暮らしを守っていただきたい。
 太郎冠者は最後に「ゆるされい」というのですが、そんなことはいえません。
 みんなで衣笠さんを9日に府庁へ送り出そうじゃありませんか。私ももちろん応援します。よろしくお願いします。