ジフテリア予防接種事件風化させないことが薬害根絶の道
1948年11月に京都と島根で行われたジフテリア予防接種で、無毒化されていないワクチンを使用したため、幼児84人が亡くなった事件の発生60周年を機に、薬害事件の原点として新たに捉えなおそうというシンポジウム(京都・島根ジフテリア予防接種禍事件研究会主催)が22日、京都市内で開かれ、被害者13人を含む113人が参加しました。
事件は、製造過程の作業ミスやずさんな検査体制が原因で、1~2歳の幼児944人が被害を受け、京都で68人、島根で16人が亡くなりました。シンポでは、ともに被害者である、同研究会会員の和気正芳氏と田井中克人事務局長、全国薬害被害者団体連絡協議会の栗原敦氏が報告しました。
和気氏は、当時の政府が発生原因とした、製造ロットの一部に残留毒素があったものの、検査で抜き取ったサンプルは無毒だったとする「不幸な偶然」説について、「直接原因は無毒化するためのホルマリン注入量を間違えたことだが、国の検査見逃しは『手抜き』が原因」と反論。さらに、無毒化されていない不良品が多発したにもかかわらず、罰則まで設けて接種を強行した背景には、「伝染病がまん延していた日本への駐留に恐怖心を抱いていた米軍にたいする厚生官僚のおもねりに起因している」と指摘しました。
7年前から遺族や被害者の聞き取り調査を行ってきた田井中氏は、島根での事件発生について、既に京都で被害が確認されていながら、県や国の状況判断の誤りから犠牲を広げたと指摘。また、訪問・聞き取りした被害者45人中20人にポリオなどの後遺症があったことやワクチン製造過程と予防接種実施に同じ元731部隊のメンバー2人が関与したことをあげ、「調べれば事件はまだまだ広がる。事実を継承し、風化させないことが薬害をなくす道」とのべました。
栗原氏は、同事件について、法律で強制しながら、必要な厳しいチェックを怠るなど国の責任は二重に重いと指摘。日本の薬害がサリドマイドやスモンを起点として考えられる中、ジフテリア事件の原因・責任と被害双方の真相解明が必要と強調しました。
参加した被害者の1人は、「図書館で偶然田井中さんの本を見つけて事件の大きさを知った。亡くなった人の分まで事実を大切にしていきたい」と話しました。