魅了する五百羅漢 若冲忌の石峯寺
近年注目されるようになった画家・伊藤若沖(1716~1800年)を偲ぶ若沖忌が10日、京都市伏見区深草の石峯寺(セキホウジ=石峰寺とも記す)で営まれました。
石峯寺は、黄檗宗の千呆(センガイ)禅師により建立された禅道場。江戸中期の寛政年間に伊藤若沖が当寺に草庵を結び、数多くの絵画や石仏を描き刻み、85歳の生涯を当寺で閉じました。青物問屋に生まれた若沖は、禅に傾倒し相国寺などで修行をする傍ら、狩野派画家に学び、琳派の装飾画や花鳥画(特に鶏画が有名)の中国古画をも模写するなど研鑽に励み、写実力抜群の画家となりました。晩年は、当寺の和尚と約10年をかけて裏山に五百羅漢を刻みました。明治期、当寺は荒廃し草木に埋もれていましたが、当寺の和尚により発掘され、整理されました。
若冲が刻んだ五百羅漢は、釈迦誕生より涅槃にいたる生涯をそれぞれの場面毎に展開されており、十八羅漢・説法場・托鉢修行・座禅屈・涅槃場・賽の河原など一つ一つ趣が各場面ごとにことなる石仏で、観る者を魅了します。写真は来迎菩薩の石仏群の一部です。
参拝者は忌供養の後裏山に登って石仏群を観賞し「これおもしろいね」「可愛い地蔵さんがわらってる」と感想を語り合いながら巡っていました。
境内には紫、ピンクや赤い可憐な花や実をつけるハクチャソウ、ミゾハギ、ハギ、ムラサキシキブなどが見ごろです。(仲野良典)
「われもまた落葉のうえに寝ころびて 羅漢の群に入るぬべきかな」(吉井勇)