曼珠沙華と流れ橋
20日は彼岸の入り。すっかり秋めき京都の河川敷や田圃のあぜ道などには真っ赤な曼珠沙華(マンジュシャゲ)が群になって咲いています。お彼岸の頃に咲くので彼岸花、死人花、捨子花、天蓋花などと言います。
絵本『ひがんばな』の著者・中斐信枝さんによると、狐のかんざし、ちんちん灯籠、赤鬼、火事花、花提灯、鬼兜、火車(ヒグルマ)に極めつけは「うちへもってくると火事になる」など長い名前も含めて100以上もあるといいます。そのほとんどはネガティブでちょっとかわいそう。
曼珠沙華は、古代インド語のmanjusakaの音写で天上に咲く花という意味からきています。長い茎に花をつけ、冬の初め頃から線状の葉を出して春に枯れます。有毒植物ですから採取も好ましくないのでそんな名前が付けられたのでしょうか? 花言葉も「悲しき思い出」。でも、学名のLycoris radiataのリコリスはギリシア神話に登場する海の女神リコリスに由来します。
写真の曼珠沙華は、後方の木津川の上津屋橋(コウズヤバシ=通称・木津の流れ橋、全長356.5メートル、幅員3.3メートルの日本でもっとも長い木造橋)付近の堤防に咲いていました。地元農家の方は「昔はこのあたりいっぱい咲いて、白いのもあった。オミナエシやナデシコなんか秋の七草も見られた」と河川敷を見ながら懐かしんでいました。
木津川左岸堤防は、嵐山渡月橋から木津市の泉大橋までの約4キロのサイクリングロードが走っています。サイクリングを楽しむ人たちがちょうど中間点にあたる流れ橋で、休んでいます。(仲野良典)
「日の落ちる野中の丘や曼珠沙華」(正岡子規)