旧陸軍16師団の保存遺跡を見学 伏見
市民団体の尽力で京都市伏見区深草の京都教育大学付属高校に移設・保存されることになった旧陸軍第16師団輜重(しちょう)部隊の門柱と歩哨舎の現地見学会が29日に行われ、約90人が参加しました。主催は「元陸軍第十六師団輜重部隊の遺跡を保存する会」。
輜重部隊とは弾薬・食糧などを補給する任務をもった部隊で、作家の故・水上勉氏もここに入隊し、馬以下に扱われた兵士の苦しみを描いた「兵卒の鬣(たてがみ)」(吉川英治文学賞受賞)などの名作を発表しました。京都市消防学校敷地内にあったこの遺構は、学校の移転に伴い、市民の募金活動と隣接する京都教育大学の敷地提供の協力により、移設・保存が実現したものです。
よびかけ人代表の井口和起京都府立大学名誉教授があいさつし、事務局・村上敏明氏が経過報告を行いました。若州人形座代表・静永鮮子さん、新建築家技術者集団京都支部・青木由男氏、戦争遺跡に平和を学ぶ京都の会代表・福林徹氏があいさつ。福林氏は「この遺跡を通じて戦争の歴史を語り継ぎ、平和を求めていこう」「市民の力で遺跡が保存できたことは全国でもまれなこと」などと語りました。祝辞をのべた京都教育大学の武蔵野實副学長は、「戦前軍隊の施設が集中していた伏見が平和と文化のゾーンに生まれ変わったことは歴史の大きな流れ」「教師をめざす学生たちが軍隊遺跡、歴史的遺物として学んでいくことは大きな意義がある」と述べました。また移設・保存工事にたずさわった小林造園の小林高馬氏と、「説明版」の製作にあたった全京都建設協同組合の池田光繁氏も紹介されました。
見学会には元第16師団輜重部隊の兵士だった5人も参加し、当時の様子を語るとともに、「あの戦争でたくさんの戦友を亡くした。二度と戦争をしたらあかんと戦争体験を語る会に毎回出席している」などと話しました。
日本共産党から赤阪仁京都市議、上原ゆみ子府議が参加しました。(S)