「父は竹のことだまを聞いていた」 水上勉七回忌展トーク
作家の故水上勉氏の7回忌を記念し、ゆかりのある人たちが、同氏への思い出を語るつどいが11日夜、中京区のギャラリーヒルゲートで開かれました。
60人の参加者を前に、12人のゲストがそれぞれ水上氏との思い出を語りました。
水上氏の著書80冊の装丁や新聞連載などの挿絵を担当した渡辺淳氏は、若狭の定宿で一緒に温泉の風呂で泳いだことや竹紙に絵を描き始めると寝食を忘れて没頭していった様子を紹介しました。
絵本作家の田島征彦さんは、水上氏との未完の絵本があることや泥酔して迷惑をかけたことを詫びました。水上氏のアパートへ掃除に行ったことがある服飾デザイナーの市田ひろみさんは「芸妓さんや料理屋のおかみらが掃除にいくんですわ。冷蔵庫の中がぐしゃぐしゃで…。食べられるもんとあかんもんを分けるんです」とのエピソードに会場は笑いに包まれました。
このほか、晩年を過ごした信州の勘六山で魚つりや畑仕事にいそしんでいたことや美人を囲んでの宴などでの様子も語られました。
水上氏の娘である蕗子さんが同氏の竹へのこだわりについて「父は親鸞賞の受賞の時、借り物の言葉はありませんと述べました。竹に執心したのは自分のイメージすることばを竹から聞きたかったのでしょうか。作家の船山滋生さんのいうように『竹のことだまを聞いていた』のかも知れません」と述べました。
ギャラリーヒルゲートは、オーナーの人見じゅん子さんが水上氏の勧めで開いた画廊。同画廊では19日まで「水上勉七回忌展 作家水上勉と友人たち」が開かれています。水上氏が遭遇した天安門事件の生々しい絵や著書や書、絵をはじめ、15人の作家の絵や陶器、写真などが展示されています。問い合わせ先TEL075・231・3702、252・1161、FAX075・231・3750。