原発問題講演会 ジャーナリスト9条の会は9日、京都市東山区で、原発の危険性を告発するテレビドキュメンタリー番組を制作した毎日放送(MBS)ディレクター・津村健夫氏による講演会「フクシマ原発問題の現状とテレビメディアの功罪」を開催しました。
 津村氏は原発の危険性を訴え続けている今中哲二さん、小出裕章さんら“熊取6人組”と言われる京都大学原子炉実験所の研究者たちの活動や事故から25年経つチェルノブイリの現状を取材し、「なぜ警告を続けるのか、京大原子炉実験所“異端”の研究者たち」(08年10月19日放送)、「その日のあとで~チェルノブイリの今」(11年6月26日)にまとめ放送しました。「なぜ警告を続けるのか…」は今年6月、放送批評懇談会の第46回ギャラクシー賞を受賞しました。
 番組制作のきっかけについて、津村氏は洞爺湖サミット(08年3月)で原発がCO2を出さないクリーンエネルギーということで推進するという文言が宣言に盛り込まれたことに疑問を持ったとのべ、同じころ愛媛県の伊方原発差し止め訴訟の証人となった京都大学原子炉実験所の研究者6人が原発の危険性を主張し、国側の意見を論破していく姿や活動を知り「定年まで“助手”という肩書きでも信念を貫き、実に清々しい生き方をしている人たちがいる。この人たちの人間ドラマを撮りたいと思った」と話しました。
 福島原発事故後、「学ぶとすればチェルノブイリ。何が起こっているのかを取材し、知らせる意味がある」とチェルノブイリを取材。ベラルーシで事故後に生まれた子どもの中に甲状腺ガンを発症していることを知り、内部被ばくの実態や現地の食べ物も追いました。「将来を考える視座を持ってもらえたら」と言います。
 取材を通して感じたこととして「企業は自分たちの論理でしか考えず、人を人として見ていない。官僚は我が身を守ることに必死」とのべ、メディアの原発報道については、「客観報道という名の下に御用学者たちの意見を検証なしに垂れ流す一方的な報道だ。この国のごまかしに報道局が利用されている。このままいけば、忘却している戦争への道につながるのではないか。命を脅かすものに対しては告発し、知ってもらいたい。生き残るためのたたかいをしなくちゃいけない。自分の持ち場でこれからもそういう番組を作っていきたい」と訴えました。