小林圭二氏・元京大原子炉実験所助手に聞く(3)
福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」(日本原子力研究開発機構)の危険性を告発してきた、元京都大学原子炉実験所助手の小林圭二さんに「もんじゅ」と核燃料サイクルの危険性・問題点を語ってもらいました。
原爆のような爆発の危険
―なぜ高速増殖炉から撤退していくのですか
小林 撤退が進む理由のひとつが、軽水炉に比べても格段に危険が大きいことです。
まず過酷事故によるリスクが大きすぎます。高速増殖炉の場合、軽水炉に比べて燃料の濃度を高め、ぎゅうぎゅう詰めにする必要があます。構造的に、原爆のような爆発が起こる危険性があるのです。
また、冷却材に水ではなく、危険なナトリウムを使わなければなりません。ナトリウムは水に触れると爆発し、高温のナトリウムは空気に触れると燃えます。95年に起こったもんじゅの事故は、温度計の設計ミスからナトリウムが漏れ、火災になったものです。「もんじゅ」以外にも世界中の高速増殖炉で138件ものナトリウム漏れ事故が起こっています。ナトリウムの熱しやすく冷めやすい性質のため、もんじゅの配管や機器は薄く作られ、地震に弱い構造になっています。
また、「もんじゅ」では昨年8月に炉内中継装置落下事故が起こり、運転を停止していました。落下した同装置を6月に引き抜きましたが、事故調査はナトリウムの不透明さなどによって、当面できないと考えています。ナトリウム使用は、常時気密性が求められ、作業効率を悪くし、常に事故の危険性がともなうことになるのです。
もう一つの大きな問題は、多額の費用がかかることです。「もんじゅ」はほとんど運転できていないにも関わらず、これまで総額1兆3000億円以上の予算がつぎ込まれてきました。停止期間中を含めても年間の平均維持管理費は200億円もかかっています。
これまで政府は、高速増殖炉によるプルトニウム燃料増殖を原子力政策の中心にすえてきました。しかし、福島原発事故で原発の存廃が問われる中、さらに危険な「もんじゅ」を再稼働させることは許されません。今、「もんじゅ」の廃炉を決断するときです。(「週刊しんぶん京都民報」2011年7月31日付)