元京都大学原子炉実験所助手の小林圭二さんに、関西電力高浜原発3号機(福井県高浜町)で運転している「プルサーマル」の計画や、「核燃料サイクル」、使用済み核燃料の問題点などについて語ってもらいました。

実現できない核燃サイクル

 ─非常に危険な「もんじゅ」を中心にした、「核燃料サイクル」にはどのような問題があるのですか
 小林 政府や電力会社は長年、「エネルギー自給率の低い日本では、『核燃料サイクル』でエネルギーを確保していくことが重要」と主張しています。「核燃料サイクル」とは、軽水炉や、将来は高速増殖炉自身の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、それを高速増殖炉で燃やして、増殖させ、エネルギーを産み出していくものです。政府や電力会社は「石油は42年、石炭133年で資源が尽きるが、『核燃料サイクル』を行えば1000年以上エネルギーが利用できる」などとしています。
 しかし、原発は石油や石炭と違って電気にしかなりませんし、現実には「核燃料サイクル」は成功していません。高速増殖炉「もんじゅ」は事故やトラブル続きで、使用済み核燃料を処理する六カ所再処理工場も稼働できず、見通しが立っていません。原発を稼働させて残った使用済み核燃料がたまっていく一方です。「核燃料サイクル」は日本だけでなく、世界中で実現できていません。

プルサーマルは危険で利点なし

 ─「プルサーマル計画」は、どのようなものなのですか
 小林 「もんじゅ」が事故を起こし高速増殖炉の実用化が絶望的になったため、高速増殖炉で使用するはずだった使用済み核燃料が大量に残り、増えています。その活用法として、浮上したのが「プルサーマル計画」です。
 使用済み核燃料を処理してプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜ、MOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)を作ります。それを通常の軽水炉の原発でウラン燃料とともに燃やすのが「プルサーマル計画」です。もともと軽水炉はMOX燃料を燃やすために造られたものではありません。MOX燃料を軽水炉で燃やすと、制御棒や制御用ホウ酸の効果が薄れ、運転が難しくなり、事故の危険性が高まります。また、ウラン燃料よりも気体状になった放射性物質・「死の灰」の放出率が高いという問題点もあります。
 高浜原発3号機ではプルサーマル運転(注)を行っており、同4号機や大飯原発1、2号機も計画中です。プルサーマルでは、これまで原発が持っていた安全余裕が削られ事故が起こりやすくなります。
 また、電力会社や国は、プルサーマルによって核燃料を再利用しているかのように言っていますが、実際に使用済み核燃料からエネルギーに変えられるのは1割もありません。使用済み核燃料を再処理するのに大量の電力や多額の費用がかかり、正味のエネルギー収入はなく経済的なメリットはありません。
 (注)高浜原発3号機のプルサーマル運転 関西電力は90年代からプルサーマル計画を進め、98年に高浜原発3・4号機でのプルサーマル実施について福井県と高浜町へ事前了解を申請。3号機は今年1月21日からプルサーマル運転を開始しています。
 日本では現在、九州電力の玄海原発3号機(09年11月)、四国電力の伊方原発3号機(10年3月)が運転を行っています。
 若狭湾の原発群で現在、プルサーマル計画が進められているのは、関電の高浜4号機、大飯1・2号機、日本原電の敦賀2号機です。(「週刊しんぶん京都民報」2011年8月7日付