(19)名ばかり店長
管理監督者ではない可能性が大
労働基準法では、原則として法定の1日8時間、1週40時間を超える残業が禁止されています(32条)。しかし、事業場の過半数労働者代表と協定を締結し、監督署に届出れば、これを超える時間外労働や休日労働をさせることができます(36条)。この場合、25%以上の割増賃金を支払う必要があります(37条)。ところが、同法41条は、これらの規制の適用除外を定めており、その一つが「監督若しくは管理の地位にある者」、すなわち「管理監督者」です(同条2号)。
本来、この管理監督者は、「経営者と一体的な立場にある者」とされ、「出社・退社について厳格な制限を受けない者」なので、労働時間規制を適用しないというのが趣旨です。ごく少数の上級管理者であって、重役に近い工場長などに限られていたと考えられます。ところが、企業が法を無視・軽視した労務管理を広げてきました。違法・不払い残業と並んで、管理監督者の不当な拡大もその一例です。
今年1月28日、東京地裁が、日本マクドナルド事件で、店長が管理監督者かどうかについて画期的判決を下しました。(1)店長の職務・権限は、アルバイト採用人事などに限られ、経営者と一体的立場での活動を要請される程に重要な職務・権限を付与されていない、(2)勤務態様は、時間外労働が月100時間を超える場合もあるなど、労働時間に関する自由裁量性が認められない、(3)処遇も、下位職位と大きく違わず、実際の残業時間を計算すると十分とは言えないと判定しました。結論として、店長は、職務の内容、権限・責任の観点からも、待遇の観点からも管理監督者に当たらないので、時間外労働と休日労働に対する割増賃金が支払われるべきであると判断したのです。
4月には労働局長宛に、管理監督者の範囲を適正化する旨の通達(基監発第0401001号)も出されています。右の判決や、この通達によれば、ご相談者の場合、「管理監督者」に当たらない可能性が大きいと思われます。(「週刊しんぶん京都民報」2008年8月10日付)