(30)突然の契約打ち切り
濫用的解雇で法的には無効
派遣元や派遣先は法に反した不当きわまりない対応をしていると言えますので、更新拒否や退寮の指示に応じる必要はありません。
まず、派遣会社の雇用責任が問題になります。3カ月の契約期間があっても反復して更新して6年も経っていますので、突然に更新拒否すること(雇止め)は濫用的解雇と考えられ、法的に無効です(労働契約法16条)。とくに、使用者側の都合による「整理解雇」(雇止め)には厳格な合理的理由が必要です。少なくとも、労働者側への配慮を欠いた、突然、住居まで奪う解雇は明らかな権利濫用であって無効です。
次に、ご相談の事例は違法派遣であったと言えますので、派遣先会社の直接雇用責任が問題にできます。製造業務での派遣解禁は04年3月以降です。6年前には製造業派遣は禁止されており、脱法的な偽装請負形式だったと推測されます。これは職業安定法(44条)や派遣法に反したもので、罰則もある悪質な労働力利用形式です。
同様な事案の「松下プラズマディスプレイ事件」では、昨年、大阪高裁が「違法派遣(偽装請負)は公序良俗に反して無効である」とし、「労働者を実際に働かせている派遣先会社と派遣労働者の間に直接の雇用関係がある」とする画期的判決を下しました(2008年4月25日)。この判決以降、派遣先の直接雇用責任を追及する事例が各地で増えています。最近では、三菱重工高砂製作所(兵庫)で約8年半働いていた派遣労働者が同社正社員であることの確認を求めて訴訟を提起しています(09年1月13日)。
派遣会社には雇用責任を負えるだけの経済的実体がないものが少なくありません。現実の労働力利用者である派遣先会社の雇用責任を追及することが本筋です。
同じ自動車部品製造の「光洋シーリングテクノ」(徳島)では労働者が、金属の産業別労組(JMIU)地域支部に加入して闘い、その結果、派遣先直接雇用を実現しています。地域で力になってくれる労組を見つけて相談して下さい。(「週刊しんぶん京都民報」2009年1月25日付)