飲食店でアルバイトしています。求人募集には研修期間1カ月は時給800円、その後は850円になると記載されていました。でも1カ月以上働いていますが時給は上りません。店長に言ってもはぐらかされます。納得いかないのですが、時給は上げてもらえるのでしょうか?(20歳、女性 京都市)

遡って不足分請求ができる

(35)給料上げてほしいイラスト・辻井タカヒロ

 まず賃金について、関連文書でどのように定められているかを確認することが必要です。
 アルバイトにも、労働基準法、パート労働法、労働契約法などの労働法令が適用されます。労働法令では、使用者(会社)は、労働者を雇い入れたときに労働条件を明示する義務があり、それに労働者が合意して労働契約が成立したと考えられます(労働契約法)。
 少なくとも、重要な労働条件である、(1)契約期間(2)就業場所・従事業務(3)労働時間・休日など(4)賃金の決定・計算・支払方法など(5)退職については、それらを記載した文書を労働者に渡さなければなりません(労働基準法15条、同施行規則5条)。
 一般には、これらの事項を記載した労働契約書(雇い入れ通知書)を渡す例が多いといえます。もし賃金額を明記した文書が渡されていないときは、労働基準法違反ですので労働基準監督署に申告できます。違反には30万円以下の罰金もあります。
 また、常時10人以上の事業場(店など)では、使用者は、就業規則を作成して賃金関連の事項を必ず定めておく必要があり、それを労働者に周知しなければなりません(労働基準法89条以下、106条)。店長に、会社の就業規則を見せるように求め、研修期間や賃金がどのように定められているかを確認してください。
 法的には求人募集の際に示された条件が、そのまま労働契約内容になるわけではありません。しかし、それと違う条件が明確に合意されたのではない限り、求人募集の内容が労働条件として合意されていると考えて良いといえます。
 ご相談の場合、研修期間が過ぎた時点で時給850円になっていると主張できますので、不足分を遡って請求して下さい。支払わなければ、賃金の全額払いを義務づける労基法24条違反ですので、監督署に申告することができます。
 実際問題としては、小規模職場では使用者から嫌がらせを受ける可能性がありますので、できれば請求する前に、京都総評や地域労組などに相談しておけば安心です。(「週刊しんぶん京都民報」2009年4月5日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。