(37)深夜手当つかない
過去の不払い分全額請求できる
労働基準法でいう労働時間は「実労働時間」のことで、労働者が使用者の支配下にある時間のことを言います。労働時間は例外なく賃金の支払いが必要であり、不払いがあれば法違反となります。
まず、営業時間と労働時間は明確に違います。営業時間帯が午後6時~午後10時であっても、その前後に準備作業や後始末作業の時間が必要です。それらの時間は労働時間といえますので、賃金を支払わなければなりません。営業時間終了の午後10時が終業時刻であっても、実際の閉店が10時を超え、さらに後始末が深夜2時まであるのなら、すべてが労働時間といえます。
さらに、労働基準法では、午後10時から午前5時までは深夜労働とされ、この時間帯の賃金は通常の賃金の25%以上増にしなければなりません(同法37条)。時給が800円なら、深夜手当25%増の1000円以上です。
もし、始業からの労働時間が8時間を超えれば、さらに25%以上の時間外手当を加える必要があり、深夜の残業であれば合計50%増の1200円以上を支払う義務があります。なお、午後12時(午前0時)で日が変わりますが、労働時間は通算して算定します。
また、営業開始時間が始業時刻とされていたとしても、実際には30分前に来て準備を始めているとすれば、30分は早出(はやで)のサービス労働となります。本来は労働時間ですので賃金が支払われなければなりません。
過去の不払い賃金・深夜手当を、遡って全額請求して下さい。ただ、使用者が時効2年を主張すれば、通常、2年を超える分の支払いを強制できません。
使用者が証拠がないと支払を拒否する可能性も多いので、労働者が毎日の就労の記録を詳しく残しておくのが良い方法です。労働基準監督署が、それを手がかりに調査に入り、救済に結びつき易くなります。また、裁判であれば、付加金として不払い額と同額を上乗せして請求することもできます(労基法114条)。(「週刊しんぶん京都民報」2009年5月3日付)