10日の府議会府民生活・厚生常任委員会で採択された「後期高齢者医療制度の廃止を求めることに関する請願」の要旨全文を紹介します。
     
 2008年4月より、「後期高齢者医療制度」が実施されたが、国民の中に廃止を求める声が大きく広がってきている。
 自民党元総務会長の堀内光男衆議院議員は、「私を含めた75歳以上の人たちは、もはや用済みとばかりに、国が率先して〝うば捨て山〟を作ったかのような印象を受ける」、「人間の尊厳というものを全く考えていない」と批判した。塩川正十郎元財務相も「世間や社会の『別枠』『邪魔者』になってしまったか」「財政上の都合ばかり優先され、人間味が欠けている」と批判の声を上げた。
 中曽根康弘元首相も「名前が実に冷たい。愛情のねけたやり方に、老人が全部反対している」「至急、元にもどして考え直す姿勢をはっきり示す必要がある」と異を唱えた。
 新聞各社の世論調査でも7~8割近い人が、後期高齢者医療制度を「評価しない」としている。また、30を超える都府県の医師会が、「反対」や「慎重」を表明している。茨城県医師会は、「皆さんこんな高齢者いじめの制度を許せますか」と署名運動をすすめ、22万筆を超える署名が寄せられている。
 沖縄県の老人クラブ連合会(会員6万3千人)は、アピール文を発表し、花城会長が、「75歳以上の先輩たちが、生き甲斐をそがれるような制度を放っておくわけにはいかない。長生きして良かったと思える世の中にしてほしい」と、即時撤廃を訴えている。
 当初、政府労働省は「70%の方で保険料が下がる」と説明してきたが、この根拠となる試算も、保険料が増えるケースが試算の対象から外されていることも明らかになってきた。政府の説明も、国民の政治に対する信用を著しく損なわせる結果になっており、後期高齢者医療制度への不信は逆に高まってきている。
 こうした状況をつくり出したのは、高齢者の「虎の尾を踏んだ」怒りであり、75歳という暦年齢で、勝手に「後期(後ろの期)」と名づけられ、今まで入っていた国保や健保から追い出され、保険料は「年金天引き」され、保険料を払えない高齢者からは保険証を取り上げる、健康診断でも、外来医療でも、入院や「終末期」に至るまで、あらゆる段階で、安上がりの差別医療を押し付けられる、という制度設計そのものに向けられた批判である。
 保険料や天引きへの「不安」「怒り」も渦巻いているが、自尊心を傷つけられたこと、人権を踏みにじられたことが、怒りを深く大きなものにしている。
 また、働き盛りの人たちや青年からも、いずれ後期高齢者の当事者となることへの不安、自分たちを育ててくれた両親や祖父母を守り通すことへの強い意志が表明されている。ある大学で学生に後期高齢者医療制度についてのアンケートをとったところ、「すべてに高齢者が保険料を負担すること」を「当然」と答えた学生は9%、「重いと思う」と答えた学生が63%との結果にも表れている。
 現在、「制度の骨格は変えず、低所得者の負担を軽減する」という見直し案が出ているが、見直しで、国民の怒りは収まるはずがない。やはり、この制度は、廃止させるしかない。野党四党による廃止法案は、6月6日参議院で可決、その後衆議院では審議をされないまま、秋の臨時国会に継続審議となった。国会の会期末で、一部の議員から「審議未了廃案」の動きがあったが、これを許さなかったのも、廃止を求める国民的な世論の反映である。
 ついては、以上の趣旨から、国に対して、高齢者のいのちと安全を守るためにも後期高齢者医療制度の廃止を求める声をあげられるよう、次の事項について請願する。
 国に対して、「後期高齢者医療制度廃止を求める意見書」を挙げること。