闘う大美堂の労働者たち 「社長はちゃんと謝罪と説明責任をはたせ」「従業員の再就職を」―大美堂印刷社(京都市右京区、従業員54人)の労働者でつくる大美堂労働組合(全印総連加盟、奥田雅雄委員長)は、同社の社長が6月末に倒産と従業員の全員解雇を突然言い渡したことに抗議し、100日以上も職場に泊り込んでたたかっています。
 「会社は破産した。今から30分後に私物をもって全員構内から退去するように」
 6月27日、中路悦雄社長の代理人弁護士が、仕事を終えた従業員たちの前でこう述べました。
 突然の倒産と全員解雇に抗議した労働組合は、職場を占拠し、社長による謝罪と経営責任の説明、従業員の再就職の保障などを求めて泊り込みのたたかいを始めました。職場内の印刷機の横にゴザをひいて労働者たちが交代で寝泊りし、取引先との処理や、大きな印刷機が傷まないようにメンテナンスなども行っています。
 「あまりにも突然すぎる。『経営は苦しいけど頑張ろう』というようなことも言われなかった。倒産した原因の説明や謝罪をちゃんとしてほしい」と話すのは同労組のSさん(43)。「23年間ここで働いてきて、居心地のいい職場だった。突然クビにされて、これからどうしたらいいのか…」
 同労組のAさん(39)は同社解雇後、他の京都市内の印刷会社で働きましたが、労働条件悪く、2カ月で退社。再び泊り込み闘争に参加しているAさんはこう語ります。
 「大美堂の後に勤めた会社は、深夜の15時間労働や、一人だけで大きな印刷機を操作させられたり、めちゃくちゃな労働環境でした。とても仕事を続けられない。印刷業界の労働条件が悪すぎる」
 泊り込み闘争を続けている奥田委員長は、「うちの労働者だけでなく、印刷業界、日本社会全体の問題です」と話します。印刷業界は大手印刷企業の仕事の独占や、労働者の権利を無視したベンチャー企業などによる価格競争で破壊されているといいます。
 「長時間のサービス残業を従業員にさせるような印刷会社は、うちで印刷するよりもはるかに安い金で仕事をしてしまう。でもそこの労働者が犠牲になっているんです。この泊り込み闘争は、印刷業界と社会全体に『労働基準法を守る職場にせよ』というメッセージなんですよ」