日本共産党福知山市議団(仲林清貴団長、6人)は27日、09年度予算や3月議会の対応についての見解を発表しました。
 全文は以下の通り。


1、はじめに
 福知山市議会3月定例会が、3月27日に閉会しました。きびしい経済不況の中、市民のくらしが大変な中で、どのように市民のくらしを守り、地域を元気にするのかが鋭く問われました。
 日本共産党福知山市会議員団は、議案が発表された段階で、(1)市民の暮らしと命を守る予算かどうか、(2)松山市長の公約でもある大型公共事業の行方、(3)人権(同和)行政の是正、(4)市職員収賄事件の徹底究明と再発防止の4点と、福知山市財政について、見解を発表しました。
 昨年夏の市長選以後、私たち市会議員団は市長の提案に対して、是々非々の立場で臨んできましたが、今回の議案提案は、本格的な予算提案であり、松山市長の公約実現など政治姿勢があらわれるものでもあり、慎重に審査を行ってきたところです。
 さて、新年度の予算をみると、この間、市民が求めていた後期高齢者医療制度の保険料軽減や福祉有償運送実施団体への補助の創設、外出支援助成事業の拡充、バス料金の引き下げなど、一定前進しています。後期高齢者の保険料について、自治体独自に助成をしているのは府内では福知山市だけであり、バス料金の大幅な減額となる「200円バス」の実現も、合併以後かたくなに拒否されてきた市民要求が大きく前進したと評価できます。これらの成果は、住民のみなさんの粘り強い運動と市会議員団の議会内外での取り組みの大きな成果です。
 しかし、一方で、国民健康保険料や介護保険料の引き上げを行い、本来市民負担軽減に使うべき大切な税金を、土地区画整理事業の赤字補てんに投入することや、人権の名を借りた同和行政の継続・拡充など、看過できない問題があり、私たち市会議員団は、下記の理由から新年度予算など市長提案の13議案に対し反対をしました。
 引き続き、市民のみなさんの願いが実現できるように、そして、市民の暮らしを応援する福知山市政を実現するために、あらためて見解を発表するところです。みなさんのご意見やご要望をお寄せください。
2、市民の暮らしと命を守る予算かどうか
 まず第1点は、市民の暮らしと命を守る予算かどうかです。新年度、国民健康保険料は一人あたり5217円の引き上げとなっています。また介護保険料は、-人あたり3072円の引き上げとなっています。本会議では「国保は、一定のルールの中で運営しており、財源が不足すると保険料の引き上げをお願いする」とこたえ、国保料の引き上げの理由を述べています。しかしそもそも医療にかかる費用が増えたのは、国の医療制度「改革」によって国保会計が負担する金額が増えたのであり、市民の責任ではありません。しかも、いま雇用の場が失われ、地域経済が閉塞している中で、国保加入者である零細業者や非正規の労働者、年金生活者など所得の少ない人が圧倒的多数加入している国保料金を引き上げることは、市民の生存権そのものにかかわる重大問題です。福知山市自身が昨年12月25日から取り組んでいる緊急相談窓口への相談でも、国保料の減免にかかわる相談が、今年2月28日までの集計で2番目に多い67件となっており、事態は深刻です。にもかかわらず国保料や介護保険料など、命や暮らしにかかわる負担を増やすことは、苦しい市民生活をさらに大変な事態に追いやるものとなってしまいます。一般会計から1億400万円を繰り入れれば、国保料の引き上げをしなくてもすみます。平成20年度の補正予算や21年度の予算では、駅南・駅周辺・石原の各土地区画整理事業などの赤字補てんには総額で15億3664万円もの税金を投入しながら、国保料の軽減に背を向ける姿勢では市民の命と暮らしを守ることにはなりません。
 第2に、緊急な課題となっている雇用確保・地域経済の活性化はどうでしょうか。この間、私たち市会議員団の調査の中で昨年末までに約400人の方々の雇用の場が奪われています。また、市の緊急相談窓口の相談件数のトップは、融資の相談です。また、2月末までの相談件数は397件に及び、緊急かつ有効な対策が求められています。しかし、本会議で私たち市会議員団が求めた「すべての事業所を訪問し実態把握を」「助成金額の17・5倍もの大きな経済波及効果のあった住宅改修助成制度の再開を」という質問に対し、「事業所の数が多く難しい」「改修助成制度は考えていない」と答弁しています。一方、国の第2次補正予算や新年度予算にもとづく市の施策はどうでしょうか。国の第2次補正は経済対策である以上、地域経済が活性化し、雇用が確保されることが肝心です。ところが、国から交付された地域活性化・生活対策臨時交付金4億7392万円で、「旧夜久野町役場解体事業」「環境パーク整備事業」「斎場修繕整備事業」「市営住宅改修事業」に約1億2000万円が活用されますが、これらの事業は21年度に予算化されることが予定されていたものであり、新規の地域活性化や生活対策の予算とは言えません。特に、斎場修繕や環境パーク整備の事業では、ほとんどの業務が市外業者への発注となり、地元業者への仕事づくりにつながりません。また、交付金の残りは、「鉄道網整備関連の基金」への積み立て1億4000万円や駅周辺区画整理事業やKTR関連の2億1262万円の予算は、大型事業をすすめる財源に振り分けるものであり、これも新規の地域活性化や生活対策の予算とは言えません。本来、国の第2次補正による交付金は地域経済の活性化や生活を応援することが目的であり、私たち市会議員団が要求している「住宅改修助成制度」の再開や、学校の耐震化や施設設備の改修のための抜本的な予算措置など、住民に身近な事業、地元業者の仕事づくりにつながる事業をすすめてこそ、交付金のもつ意味を発揮するものと考えます。現に、京丹後市では、緊急雇用安定助成金の事業主負担となっている5分の1を市が負担しており、大きな効果を発揮しています。その背景には、事業所の調査をしっかりと取り組んだ上で、行政が「今何が必要なのか」を把握したことがありますが、福知山市においても、事業所調査をただちに実施すべきです。
3、松山市長が掲げた公約である大型公共事業の行方
 次に、大型公共事業はどうなっていくのかが大きく注目された議会でした。松山市長は、自らの公約実現として「北近畿の都センター建設凍結」「学校給食センター建設は延期」という方針を打ち出しました。昨年、松山市政がスタートして以後、19プロジェクトの見直しの中で、これらの大型事業計画を-部変更して推進する方向が打ち出されましたが、この計画変更に対して、私たち市会議員団は、北近畿の都センターは「図書館機能が大きく後退し、保健や福祉の複合施設は『まずは建物ありき』の発想であり、計画を凍結し、図書館機能に特化した抜本的な計画変更」を求めてきました。また「学校給食センターについて、そもそも学校給食の在り方そのものをしっかりと議論すべきであり建設をごり押しすべきではない」と訴えてきました。今回、これらの施設が「凍結」「延期」されたことは、計画内容自体の問題と併せて、現在の経済情勢から考えても当然の結果です。しかし、学校給食センターについては「建設を予定していた旧三和町の住民のみなさんの理解を得られれば建設をすすめる」としており、さらに卸売市場特別会計の赤字の補てんのために卸売市場の土地を給食センター用地として売却する方向をうちだしています。本会議では、「給食の理念をはっきりさせていく、児童や生徒に望ましい学校給食のあり方を児童や生徒の実態を踏まえ、保護者の意見にも耳を傾ける」と答弁しているわけですから、給食センターの建設先にありき、卸売市場会計の赤字補てん先にありきではないようにすることを強く求めます。また、「北近畿の都センター」についても、凍結する考えを述べながらも、一方で「決して建てないとは言っていない」と答弁しており、予断を許さない状況に変わりはありません。また、大型事業である「防災センター」については、その施設の必要性は理解できるものの、私たち市会議員団の調査でも、同規模の自治体で事業経費を大きく抑えて整備している事例もあり、委員会の審査の中では「26億円規模の計画を4億円程度は削減できる見込み」ということが明らかになりましたが、さらに計画の内容、整備計画自体の見直しを求めます。さらに、「e-ふくちやま事業」に関連して、有線テレビジョンに関連する負担金や利用料の条例が、時期尚早ということから継続審議となりましたが、これまでの経過と今後の事業の方向や住民負担のあり方について議論が必要です。
4、福知山市の財政について―特別会計の赤字の原因は何か、その総括が必要
 次に、福知山市財政についてです。福知山市は、新年度末の段階で市民一人あたり約126万円の借金を抱えることになる見込みです。新年度、大型公共事業を一定抑制したものの、今後の財政運営は引き続き大きな課題を残します。この3月議会では、地方財政健全化法の関係から、資金不足比率の基準を上回ることが予想される特別会計、福知山駅南・駅周辺・石原の各士地区画整理事業ならびに、公設卸売市場事業それぞれの特別会計に対し、平成20年度補正予算と新年度予算で基金からの繰り入れ総額9億874万円、減債基金からの貸付4億2790万円、減債基金からの繰り替え運用2億円、あわせて総額15億3664万円もの措置が講じられます。これは簡単に言えば、これらの特別会計の赤字に対して、これまで積み立ててきた基金を活用して一時的に穴埋めし、地方財政健全化法の基準をみたすための措置以外の何ものでもありません。特に、土地区画整理事業については、本来独立採算で計画されていましたが、土地価格の下落によって、駅南区画整理事業では5億7000万円、石原土地区画整理事業でも5億9000万円の赤字が発生し、その補てんのために税金が投入されています。これらの事業が何故赤字になったのか、そもそも計画そのものに問題はなかったのか、誰が責任をとるのかなど、市政の在り方として鋭く問われます。これらの多額の税金投入の一方で、国保会計には、税金を投入せずに国保料を引き上げているわけですから、問題は重大であり、市長の政治姿勢が問われる問題です。
5、人権(同和)行政の是正
 私たち市会議員団はこれまで一貫して、「人権」の名を借りた同和行政はただちにやめることを求めてきました。同和対策の法期限後においても、福知山市では、人権ふれあいセンター(旧隣保館)や児童館、教育集会所において、その地域だけに限定した特別な施策(高齢者デイサービス、補習学級、生活相談事業など)をすすめてきました。そのために、人権推進室では、法律の期限前よりも多い75人の職員が働いています。予算も人件費を含めて4億4417万円もの規模となっています。また、部落解放同盟に対する補助金を支給し、同和問題に偏った人権研修を、市職員をはじめ市民を対象にすすめています。それでは新年度予算ではどうなっているのでしょうか。残念ながら、これまで指摘してきた問題点は何一つ改善されていないのが実態です。むしろ、新年度には新たに「(仮称)人権ふれあいセンター施設等のあり方懇話会」を設置するための事業が予算化され、今後もこれまでの事業をすすめるために、いやそれ以上に拡充するための根拠づくりをすすめようとしており、この分野では、明確に時代の流れにも市民要求にも逆行しています。本会議では、「特定の地域を対象としていない」と強弁したものの、委員会では、「特定の小学校区で実施している」ことを認めざるを得ない事態となり、矛盾があることは明確です。また、人権関連施設において、高齢者福祉や障害者福祉施策をすすめることが委員会の審査の中で明らかになり、明確に2重行政であることは大きな問題です。人権推進室を廃止し、その予算や職員を活用して、市民全体を対象にした暮らしや営業の実態調査をすすめ、困っている市民は誰でも応援する市の体制に是正してこそ、人権を大切にする福知山市と言えるのではないでしょうか。
6、市職員収賄事件の徹底究明と再発防止
 市職員収賄事件は、市政に対する市民の信頼を大きく損なわせました。この事件の徹底究明と再発防止は現市政にとっても極めて重要な課題です。この問題で、新年度予算をみると、入札制度の改善として電子入札事業や法令遵守推進の事業が継続事業として予算提案されています。これらの事業は当然すすめるべきではありますが、肝心の徹底究明を市の立場で行う姿勢が見受けられません。3月9日の判決では、幹部職員は極めてきびしい有罪判決がだされました。これまでの裁判や100条委員会で、従来の福知山市の調査報告とは違う事実が明らかになっている以上、市長は汚職究明を、司法や議会の100条委員会に委ねるだけでなく、市行政自身が「対策会議」を設置し、事実関係の再調査を行うことこそが、福知山市の自浄作用になり再発防止につながっていくのではないでしょうか。
7、最後に―「ガス工場跡地」の問題について
 この3月議会には、市のガス工場跡地を民間企業に売却したあとに、400本以上の基礎杭が残されていたことが発覚し、急遽8700万円の工事を行った専決処分の承認の議案が提案されました。この問題は、当時のガス水道部の職員の引き継ぎのミスということでありましたが、もし、きちんと引き継がれていれば、多額の負担をしなくても済んだ可能性があります。経過と問題点を明らかにしなければなりませんが、その審査を行う委員会開催前に、関係する幹部職員の処分が行われました。議会に議案として提案しながら、一方で市職員を処分して解決をはかったようなやり方は到底認められるものではありません。市政が変わったのであれば、これまでの市政運営の問題点をしっかりと検証し、解決策を市民に明らかにし、自浄努力を発揮してこそ、市長の公約実現といえるのではないでしょうか。その政治姿勢と大きくかけ離れた行政運営は問題です。
 以上、3月議会に提案された議案に対する見解ですが、その立場に立って、新年度当初予算や国保会計予算・介護保険会計など13議案に反対をしました。
 私たち市会議員団は、今後の議会に向けて、地域経済活性化・雇用対策のために国の予算を有効に活用させることや、国保料や介護保険料の軽減など社会保障の充実、教育予算の抜本的な拡充で耐震化や学校施設の整備・保護者負担の軽減など、引き続き、市民の切実な願い実現のために奮闘する決意です。
 みなさんのご意見やご要望を、ぜひお寄せください。