ひと・いのち大切にする府政つくりたい 門祐輔さんの呼びかけ
来年4月の京都府知事選挙への立候補を表明した京都民医連第二中央病院院長の門祐輔さんの出馬に当たっての呼びかけ、「府民のみなさんへ―ひと・いのちが大切にされる京都府をつくろう」を全文紹介します。
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<医師としての私の歩みと思い>
私はこれまで医師として多くの患者さんをみてきました。専門医として水俣病の診断をし、被害者救済のための京都訴訟に関わってきました。漁業で生活ができなくなり熊本県から関西へ移住せざるをえなくなった水俣病患者さんは、手足のしびれやふらつき、疲れなどの肉体的な苦痛とともに、行政認定されずニセ患者呼ばわりされる精神的な苦痛も持っておられました。
年々窓口負担や保険料が引き上げられ、お金が払えない人たちに対して、スタッフと一緒に相談にのり、適切な医療が受けられるように努めてきました。中には受診したときにはすでに末期の癌で、短期間のうちに命を失う事例を経験し、くやしい思いをしてきました。ひとの命を守る仕事をしながら、毎年自殺者が3万人を超える現状に、やりきれなさを感じてきました。「介護の社会化」の名のもとに始まった介護保険なのに、家族介護がないと成り立たない仕組みであり、改訂のたびに利用しにくくなることに怒りを感じてきました。
1990年代に、都市部と違いマンパワーが不足する京都府北部の医療を経験しましたが、その時よりさらに体制が弱まっている現状に何とかしなければならないと思っています。
<私の時代認識>
ひとをモノあつかいし、競争、効率を重視した「構造改革路線」は破綻し、残されたのは格差拡大、ワーキングプアです。弱い立場の人に最もしわよせが行き、うつ病などで仕事が続けられなくなる、親のリストラで中途退学を余儀なくされる学生の存在など、労働の場や人としての成長が保障されなくなりました。地域を支えてきた地場産業がこわされ、地域の担い手の生活を破壊し、地域での支え合い、助け合いの力が低下しました。競争、効率重視の路線が、実は社会全体でみればきわめて非効率なやり方であったことは明らかです。
京都府内全域で、今の政治のつめあとが見られます。とりわけ強引に進められた市町村合併で地方は疲弊し、「限界集落」が増え、北部を中心に医療崩壊が進行しています。社会全体が病んでいます。
最近、不況を口実にクビになり路上生活をしているホームレスの方への支援活動に参加し、多くの悲惨な事例を経験しました。こうした方々にはまず生活の保障が重要であり、雇用の確保、失業保険、生活保護の適用など行政の役割が重要です。同時にこうした方々に寄り添い、一緒に問題の解決に努力する個人・団体の存在の持つ意味が非常に大きいことを実感しました。ひと・いのちが大切にされる社会をめざす連帯の力、人と人とのつながりを重視する地域・社会の復活が求められます。
<いま府政に求められるもの>
来年選ばれる知事の任期は2014年までです。「少子高齢化」により、2014年は65歳以上の高齢者の人口が日本全体で25%を超える年です。本来長寿は喜ばしいことですが、残念ながらそれを支える医療・介護制度は不十分です。一方の少子化も社会に原因があります。若者の2人に1人は非正規雇用、ワーキングプア、将来不安、高い子どもの教育費・医療費、などなど。私自身3人の子どもを持つ親として実感します。
いま府政に求められるものは、こうした問題を解決し将来不安をなくすことです。医療・福祉・社会保障といった社会の安全装置がしっかりと機能していること、だれもが質の高い教育が受けられること、各地域の立地条件にあわせた産業を発展させ雇用の場があること、食の安全を保障する農・林・漁業を重視すること、CO2排出を削減し、自然環境を守る新たな産業を創設することは重要です。
社会保障分野は他の産業に比して経済への「総波及効果」が大きく、とりわけ「雇用誘発効果」は抜群です。この分野や農・林・漁業、環境分野といった「暮らしを支える産業」を伸ばすことは、ひと・いのちが大切にされる社会をつくる上で非常に重要です。京都の伝統のものづくりとあわせて各地域が活性化され、住民自治を基礎に地元でお金の流れができる「地域循環型経済」を支援していくこと、市町村と協力してこうした土台をつくることが府政に求められています。そのもとで、将来不安の解消とともに少子化の流れを変えていくことができます。
最も大切なのは、憲法九条、二十五条に規定された平和、生存権を基礎に、一人一人がひととして認められ、その能力が最大限に発揮される環境をつくり出すことです。本当の効率のよさはこうした環境のもとでつくられます。そのために、おおもとの国の姿勢を、ひと・いのちが大切にされる政治をめざすよう、働きかけていくことも大切です。
<まず取り組むこと>
まず命に関わる問題を最優先して取り組みます。京都府北部や南部に顕著にあらわれている医療崩壊(医師不足、脳外科、産婦人科など特定科の不足、救急体制の崩壊など)は解決が求められる焦眉の課題です。京都府立医大、京都大学の2つの大学病院、京都府医師会、日赤などの公的病院、私立病院など、すべての医療団体に呼びかけて、オール京都で取り組む仕組みをつくります。この点では府と知事のリーダーシップが決定的です。
いま医療、介護、障がい者の分野では、お金のあるなしにかかわらず受けたサービスの量に応じて対価を支払う「応益負担」があたり前になっています。しかし本来この分野は、必要なサービスを受け、所得に応じて支払いを行う「応能負担」を原則にすべきです。この考えに基づき、高すぎる国民健康保険料の引き下げ、資格証明書発行の中止などの政策を具体化します。人口の高齢化に伴い、今後ますます重要になる介護労働者の処遇改善に努めます。
<ひと・いのちが大切にされる京都府を願うみなさんへ>
わたしの医師としての専門は、リハビリテーション医療です。リハビリテーションは、環境を改善して、障がいをもつ人にとって住みよい社会をつくることを大切な課題と考えます。環境を改善することは、障がいをもたないひとにとっても住みよい社会、だれもが安心できる社会をつくることになります。いま府政にはリハビリテーションが必要です。目標は、ひと・いのちが大切にされる府政です。そのために必要なことは国に対してもしっかりと要求していく府政です。
以上が私の知事選に向けての決意と呼びかけです。今後京都の各界各層のみなさまと懇談を行い、ご意見を伺いたいと思います。それらをふまえて、ひと・いのちが大切にされる京都府のための政策を具体化していきたいと思います。みなさま方のご支援とご協力をお願いいたします。