磨崖仏 京都府相楽郡の笠置町は奈良と京都の間にあり、木津川上流の山峡に歴史と四季折々のロマンが息づく里。中でも国の名勝にも指定されている笠置山は、春は3000本の桜や山吹、小鳥がさえずる緑のハイキング、秋は元寇太鼓が響く秋祭り、冬はきじ料理、ぼたん鍋やかも鍋と人誘う山です。
 笠置山には、2000年前から信仰の対象になっている巨大岩群があります。奈良時代に東大寺の実忠和尚、良弁僧正が巨石に刻んだ仏を中心として山一体が修験場として栄えました。巨石群には、笠置寺本尊の弥勒大磨崖仏、虚空蔵磨崖仏の他、巨石の割れ目をくぐる胎内くぐり、太鼓石、ゆるぎ石、平等石、蟻の戸わたりなどもあって、巨石から眼下に広がる木津の景色は抜群です。
 巨石に伝わる伝説はおもしろく、天武天皇が皇子のころ、狩り途中で巨石群に遭遇して道に迷ったが仏を祈念して難を逃れ、そこに笠を置いたという笠置石。笠置町の名の由来にもなったそうです。
 写真はフジバカマが咲くゆるぎの石二つ。なんでも後醍醐天皇が鎌倉幕府の奇襲をうけたところで、奇襲に備えて運ばれ、人の力でグラグラ動かし崖下に落とせるから「ゆるぎ石」だそうです。(仲野良典)