なぜNHKが「坂の上の雲」なのか NHKが11月から放送を開始したスペシャルドラマ「坂の上の雲」について考える講演会が12日、長岡京市のバンビオ1番館で開かれ、奈良女子大学名誉教授の中塚明さんが「『韓国併合』100年と重ね合わせて なぜ、NHKが『坂の上の雲なのか』」をテーマに語りました。乙訓革新懇が主催したもので、130人が参加しました。
 中塚氏は、著者の司馬遼太郎が生前、公の場所で「テレビや映画になると戦争をあおっているような誤解を与える」と視覚化を許さなかったことにふれながら、NHKの歴史観を鋭く批判しました。
 また、テレビでは「明治賛歌」のオンパレードになっているものの、日清、日露戦争が朝鮮を足場にして犠牲を強いた侵略戦争であり祖国防衛の戦争ではなかったこと、歴史の偽造について事実をあげて批判しました。出演している有名俳優たちの発言も司馬歴史観にそったもので誤りがあることを具体例をあげて指摘しました。
 中塚氏は、当時の朝鮮では地方の役人の暴政に抗議して立ち上がった東学農民軍のたたかいがあり、抗日のたたかいがあったことや1980年の金大中の再起はこのようなたたかいの歴史に根ざした決然とした行動であったことを強調しました。司馬さんは後になって朝鮮に対する認識に誤りがあったことを認めていたことにもふれました。そして、NHKが歴史の真実に目をふさいだまま「坂の上の雲」を放映し、日本人をどこに連れて行こうとしているのか危惧していることをのべました。
 参加者からは「日本近代史をほとんど学んでおらず韓国併合についても何も知っていないことを恥じました」「私も学校教育では日本史を学んだが明治から昭和前半の歴史は抜け落ちていました。今日学んで、私の世界観、人生観は大きく変わったことを自覚しています」などの感想が寄せられました。(梅林照夫)