綾部中演劇部 綾部中学校演劇部は1日、綾部市内で長崎で被爆した少女が主人公の「十六歳 ナガサキの夏1945」を上演しました。約70人の観客から力いっぱい演じた生徒たちに拍手喝さいが送られました。
 夏の公演では戦争や原爆を題材にした作品を演じることが伝統になっている同部。16回目となる今回は、厳しい戦渦の中でも恋をし、将来の夢を語り、家族や友達と毎日懸命に生きた女学生、野口優子の物語です。長く全国で演じられてきた同作にオリジナルのメッセージエピローグを付け加えました。
 部員たちは5月から戦争体験が書かれた本を読み込んだり、原爆被害の実相を調査しながら練習を重ねてきました。練習後のミーティングでは、「特攻隊員が二度と婚約者に会えないという辛さをもう少し理解して表現した方が良いと思う」「死ぬシーンを臨場感をもって演じたい。もう少し声も大きくしたい」と意見・感想を交流。観客に当時の様子や雰囲気が伝わるように、長崎弁のイントネーションや衣装など細かい点にもこだわり完成度の高いものにしようと努めてきました。
 同部卒業生が公演を手伝うことも同部の伝統。この日も4人が参加し照明や開演前のアナウンスなどを手伝いました。神農友季さん(15)=高校1年=は、「成長した後輩の姿を見ることができてうれしかった。戦争ものは重いという意見もあるけど、身近に戦争を考える機会がない中で演劇部が演じ続けることに意味があると思います」と後輩の成長と受け継がれる伝統に笑みを浮かべていました。
 上演後、熱心にアンケート用紙を記入していた同中スクールソーシャルワーカーの三宅麻美さん(50)=綾部市=は、「12人の子どもたちが自分の持ち場をもって、演じきったことに本当に感動しました。自分と同年代の子が悲惨な状況に置かれたということを想像し、演じたことはきっとこれからの糧になると思います。今学校現場ではぎりぎりの授業時間の中で子どもも教員も大変。演劇に時間をかけて取り組む機会が少なくなっています。これからも伝統を守りながら、演じ続けてほしいと思います」と話していました。
 部長の山本琴音さん(15)=3年=は、「重々しいテーマを扱っていますが、だからこそ多くの人に語りかけたいと思いました。私たちは戦争を体験したことはないけれど、戦争があったということは伝えることができます。後輩たちには平和の尊さを伝える伝統を引き継いでいってほしい」と話していました。(森優)