日本共産党府議団(新井進団長11人)は14日、声明「9月定例議会を終えて」を発表しました。全文は以下の通り。


 9月22日に開会した京都府議会9月定例議会が、10月8日閉会した。
今議会は、長引く不況に加え、円高の影響による府民生活の深刻さの中、その対策に自治体がどう取り組むのか、また関西広域連合設立案や議員定数問題、一括交付金について等、地方自治の在り方が真正面から問われる議会であった。
 我が党議員団は、地方自治・住民自治を守り、府民生活と営業を支援する立場から、攻勢的に論戦した。
 1、今議会に提案された議案のうち第20号議案「関西広域連合設置に関する協議の件」及び第6号議案「京都府国民健康保険広域化等支援基金条例一部改正の件」の2件に反対し、人事案件を含む他の議案には賛成した。
 1号議案「一般会計補正予算案」には、これまで我が党議員団が緊急経済対策として求めてきた、中小企業への固定費支援が、初めて実施されることとなった。しかし、「京都産業21」を通じてリースを受けた場合へのリース代助成とする限定的なもので、今後、苦境にあえぐ多くの中小業者への固定費支援策の具体化を求めるものである。また、子宮頸がんワクチン助成も実施されることとなった。しかし、自己負担が残されており、国に自己負担なしで接種できるよう求めるとともに、ヒブワクチン・七価ワクチン支援の実施や子どもの医療費助成制度拡充で通院も小学校卒業まで無料化することが必要である。鳥獣害対策も、府独自支援策が講じられることとなったが、最も必要なところに効果的な対策を講じ、農家の切実な要望に応えることが必要である。これらは、議員団の調査や運動と結んだ論戦により実現してきたものである。
 なお補正予算案には、関西広域連合設立に係る分担金が含まれており、その部分には反対した。
 2号議案「京都府知事の給料の月額の特例に関する条例制定の件」は、いわゆるメール問題に対する知事の責任を明らかにするため、給料1カ月分の50%減額をおこなうものである。今回の事件が公選法違反であったことは明らかであり、この程度の軽い処分で一件落着とすることは到底できず、徹底した再発防止策を求めるものである。
 5号議案「京都府地球温暖化対策条例一部改正の件」については、2020年25%のCO2削減目標を達成するために実効ある抜本的な対策を講じるため、明確な削減目標をもったキャップアンドトレードを実施すること、860万トンものCO2を排出する関西電力舞鶴火力発電所の運転中止を求めること、自然エネルギー導入への本格的な支援策を講じることを求めるものである。
 第6号議案「京都府国民健康保険広域化等支援基金条例一部改正の件」は、国民健康保険の都道府県単位の一元化につながるものである。これにより、市町村一般会計からの繰り入れがなくなれば1世帯平均1万円の国保料・税の引き上げになること、地域によって医療資源等が違うにもかかわらず国保料・税を無理矢理平準化するものであること、住民に身近な基礎的自治体から、住民のいのちを守るという最も大切な役割を取り上げることにつながるもので、反対した。
 2、地方自治、住民自治を壊す議員定数削減と関西広域連合設立案の強行が行なわれたことは重大である。
 議員定数問題では、最大2.89ともなっている「格差是正」が求められていたにも関わらず、与党会派が「選挙区・定数等小委員会」で「1増3減の定数2名削減」を提示したため、10月7日に「民意を削り、行政へのチェック機能弱める『定数削減』ではなく、議員報酬の大幅削減を」とする声明を発表し、「議会も身を切る」というのなら、「議員報酬」3分の1カットにより、3億円削減することを提起した。
 また我が党議員団は、最終本会議で「京都府議会の議員の定数並びに選挙区及び各選挙区の議員の定数に関する条例の一部改正案」として、現定数を維持し、2005年度国勢調査と直近の推計人口からみて、全ての選挙区で格差2倍以下となる1増(西京区)1減(南丹市及び船井郡)案を提案した。しかし、与党会派は1増(西京区)3減(左京区、舞鶴市、南丹市及び船井郡)案を提案し採決した。これは、「定数削減ありき」であるとともに、もともと格差是正の論議を、「基数」なる別の計算方式を持ち出して、左京区をまず削減するという極めて党略的なものである。
 関西広域連合設立案については、特別地方公共団体という地方自治の組織をつくるにもかかわらず、府民にほとんど知らせず、「パブリックコメント」(府民意見提出手続)や公聴会など府民に説明し意見を聴く機会に背を向けるという住民自治を踏みにじるものであり、また奈良県や三重県、京都市等が参加しないままの設立は、防災や観光など広域的な諸課題の解決に障壁をもたらすものである。さらに、審議を通じ、山田知事自身も認めたように、関西財界主導で進められ、道州制へのステップとなる危険がいよいよ明らかになった。
 我が党議員団は、「関西広域連合(仮称)特別委員会」で「住民的論議をする上でも、継続審議を」と求めた。しかし、これまで反対的な意見を述べてきた自民委員や民主委員も含め、我が党以外がすべて継続審議に背を向け、採決を強行し賛成したことは、まさに知事いいなりのオール与党の姿を示したものである。ましてや議会基本条例の制定に向け、二元代表制の一翼を担う議会の役割を論議している時であり、府民的にみて到底理解が得られるものではない。
 こうした中、与党会派は8項目の付帯決議を付けざるを得ないところまで追い込まれた。
 我が党議員団は、与党会派がこれらを強行したことに対し、声明「地方自治・住民自治を壊す、議員定数削減と関西広域連合設立案の強行に断固抗議する」を発表した。
 3、円高をはじめ、府民要求を掲げた調査にもとづく論戦により、掲げた要求の実現がさし迫った課題であることが明らかとなった議会であった。
 京都市会議員団と連携し、京都市内の中小業者を訪問して円高調査をまとめ、それを開会日に記者会見で発表、さらに円高対策・中小企業支援策を京都府に申し入れた。これを踏まえ、中小企業支援や仕事おこしについて、代表質問をはじめ攻勢的に取り組んだ。こうした中、京都府も円高対策で国に申し入れざるをえなくなった。
 住宅リオフォーム助成制度は、すでに実施している与謝野町や秋田県に出向いて調査した実態をもとに、実施を迫った。小規模工事希望業者登録制度も、亀岡市や埼玉県を調査し、実施を迫った。知事は「例外的には、少額な修繕等については、地域の小規模な事業者に依頼する弾力的な対応を行なっている」と答えざるを得なかった。これらを制度として確立させるため、全力を尽くすものである。
 中小企業振興基本条例について、京都府のすべての中小企業を支援するため、すでに実施している千葉県の調査をふまえ、制定を迫った。知事は「中小企業応援条例を制定して、取り組んできた」と答弁したが、「応援条例が目玉としている研究開発事業で、知事の認定を受けた企業は、わずか65社」と追及した。
 我が党議員団は、この秋から中小企業振興基本条例の創設のため、各種団体と懇談を重ね成立を目指すものである。
 4、「地域主権」の名による医療・介護分野での新たな抑制路線の京都における具体化に対する運動と論戦がいよいよ必要であることが浮き彫りとなった。
 代表質問で、京都府が進める都道府県単位の国保一元化の中止を求めたことに対し、山田知事は「保険というのはある程度規模がなければ成り立たない。保険料は平準化がなければ成り立たない」と答弁したが、これは社会保障としての皆保険制度を充実する責任を有する国を免罪するものである。高すぎる国保料や無保険者の問題など、社会保障としての国民健康保険の抜本的な改善を求めるものである。
 また京都式地域包括ケアの中間案が今議会に報告されたが、来年度の介護保険制度の見直しにあたり、地域包括ケアの名で、介護給付の抑制や重点化などを行ない、サービスを在宅に重点化して、そのサービスを「自助」「互助」「共助」そして最後に限定的な「公助」で補おうとしている下で、現場の実態にあった制度構築の取り組みも求められる。
 5、国への意見書について、切実な府民要求を前に、与党会派も応えざるを得ない事態となっている。「経済・雇用対策の迅速・着実な推進を求める意見書」、「B型肝炎訴訟の早期全面解決を求める意見書」、「米価下落に対する緊急対策を求める意見書」、「口蹄疫対策の充実・強化を求める意見書」、「私学教育の振興に関する意見書」、「ふぐの衛生確保対策の充実・強化を求める意見書」、「尖閣諸島海域における中国船領海侵犯に関する意見書」が可決された。
 我が党議員団は、4会派提案の「地方財政の充実強化を求める意見書」は、消費税増税に道を開くものであり、また「総合的な交通対策の構築を求める意見書」は、新たな高速道路建設を推進する立場のため反対し、その他の意見書には賛成した。その結果、B型肝炎患者の裁判原告団から、全会一致で意見書が採択されたこと、及び党の努力に感謝の言葉が寄せられた。
 一方、民主党会派は、我が党提案の意見書案にはすべて反対し、さらに「米価暴落に対する緊急対策を求める意見書」及び「尖閣諸島海域における中国船領海侵犯に関する意見書」に反対したが、これは府民の願いに背くものである。
 住民自治と地方自治をめぐる新たな段階を迎えたことが明らかとなった議会であった。また、知事いいなりの古い「オール与党」の枠組みにしがみつき住民自治を投げ捨てる姿も浮き彫りとなった。我が党議員団は、深刻となる府民生活の願いに真正面から答え、ともに暮らしと営業・いのちを守るため全力を挙げるとともに、来春のいっせい地方選挙で、必ず前進を果たすため力を尽くすものである。

以上