「坂の上の雲」は天皇制下の朝鮮観で書かれている
「NHKドラマ『坂の上の雲』の歴史認識を問う」の緊急講演会が17日、京都市中京区で行われました。京都革新懇・北上革新懇どの主催で約80人が参加しました。
主催者の京都革新懇代表世話人森川明弁護士は「次世代に平和で民主的な社会を引き継がなければならない。その為にも本日は『坂の上の雲』の裏の部分の歴史を正しく学んでいただきたい」と述べました。
講師の奈良女子大名誉教授の中塚明氏は、「坂の上の雲」は「明治の日本」を無垢でいじらしく「少年の国」として、「日露戦争は祖国防衛戦争」「フェアで真っ直ぐな戦争」と描いていると指摘。「日清戦争、日露戦争って、どんな戦争だったのか?」として、二つの戦争の「宣戦の詔勅」によると、「朝鮮独立のため」「韓国の保全=日本の国利のため」とあり、結局、この大戦は「朝鮮を日本が独占的に支配する戦争」であったと述べました。そして、「司馬が朝鮮のことを書く『手法』」は「朝鮮が衰亡した原因は自主的に自国を変える力がまったくない国」として、「当時の日本の公言できない蛮行と朝鮮の民族的動き」について「ここをしっかりつかみたい」と述べました。
また、「1894年7月朝鮮王宮占領」「1894年秋からの東学農民軍主力の大民族闘争」等々、1910年朝鮮併合に至る歴史を詳しく解説し、司馬は天皇制下の日本の「朝鮮の見方」から一歩も出ていないと批判。「司馬は朝鮮のことはほとんど具体的に書いていない。ここに『坂の上の雲』の最大の問題点がある。NHKも朝鮮の事を何ら調べていない」と指摘。最後に、「我々自身も、『明治栄光論』『平和主義者とする伊藤博文論』などの弱点をどう克服していくかが重要」と結びました。(越智薫史)