大震災と原発災害の対応について 日本環境学会が声明
日本環境学会(和田武会長)は18日、「東北地方太平洋沖地震の被災と福島原発災害への対応についての緊急声明」を発表しました。以下、全文を紹介します。
「東北地方太平洋沖地震の被災と福島原発災害への対応についての緊急声明」
3月11日午後に発生した東北・太平洋沖を震源とするマグニチュード9.0の地震により、東北地方、関東地方などに多くの被害がもたらされた。政府は全国民の力を結集し、被災地で救助を待っている人々を速やかに救助すると共に、様々な施設に避難している多くの人々が安心して当面の生活を送れるよう、食料、医薬品、燃料などの物資を届けると共に、通信、交通、医療サービスを確保しなければならない。震災に、自治体の広域合併が追い打ちをかけ、現地自治体の機能が低下している。被災していない自治体が大規模かつ系統的に現地に支援に入って自治体機能を回復することや、通信を確保することなどが緊急に求められる。
東京電力福島第一原子力発電所では、原子炉を多重に守るための冷却装置が地震と津波で損壊して冷却機能が失われ、爆発や火災が相次いでいる。3月17日の時点で、1~3号機では炉心熔融により圧力容器・格納容器内放射性ガスが外部へ放出され、3、4号機ではプール内保管核燃料が水から露出、高温化し、いずれも放射線や放射性物質を外の環境と隔てるバリアが損なわれてきている。5、6号機も冷却を要する状況である。現地では多くの人が高放射線量下で懸命の作業をしているが、依然として非常に危険な状況と見られる。原発のある福島県の住民や自治体は、震災と原発災害が重なり、きわめて困難な状況に置かれている。政府はこれらの原子炉で何が起こっているのかを迅速かつ十分に明らかにし、多くの知見を集めて適確に対応する必要がある。
周囲への放射線も、福島第一原発正門でmSv/h(ミリシーベルト/時)単位の計測値が続き、原発から20km離れた地域でも最大0.33 mSv/hの観測値が得られている。政府はパニックを恐れてか、情報提供が遅く、少なく、健康への懸念が広がっている。政府は原発情報、放射線情報について、国民が健康を維持し、安心できるよう、また各地域で放射線に関する知識のある者が状況判断できるよう、放射性核種、線量データ、その他について迅速に情報提供をすべきである。対策についても大きなダメージを予測して安全最優先の視点に立ち、住民、特に患者、高齢者、子どもなどの健康弱者の避難、避難場所や手段、避難先でのサービスの確保などを早急に進めるべきである。また、放射能汚染が予測される地域では、子どもたち向けにヨウ素剤を配布しておく必要がある。
今回の事態は、地震国日本での原子力優先のエネルギー政策の誤りと原発安全対策が十分でないことを示した。すべての原発の安全について総点検を実施して結果を公表すると共に、安全対策が不十分な原発は直ちに運転を停止すべきである。
電力会社は、需給が逼迫するとして計画停電を行い、住宅地が夜間も含めて停電になり、また交通機関が長時間止まるなど、国民経済が震災復興を図る上でマイナスになっている。電力消費の3分の1にすぎない家庭・中小企業の一律停電ではなく、災害復旧に関係が薄い工場やオフィスなどの大口消費施設、あるいは電力多消費機器保有者に期間を切って操業の縮小の協力を求めるなど、メリハリのきいた対応が必要である。大学や研究機関も病院を除いて協力を惜しむべきではない。
震災復興と原発災害対応の両面で、国民のいのちと健康と環境をまもり、復興にむけ、安全最優先の視点に立った対応を求める。また、その後は地域住民のくらしを回復させ、原発依存でない、防災・環境・食料などで安心できる持続可能な社会を目指す復興が必要である。日本環境学会もそのために協力していきたい。