西山とき子さん著『指さす彼方に』を読んで 藤原冬樹
京都市右京区在住の藤原冬樹さんからこのほど、投稿「西山とき子さんルポ『指さす彼方に』を読んで」が寄せられました。紹介します。
12年間、日本共産党の参議院議員として活躍されてきた西山とき子さんが、ロシアへの私的ルポルタージュ『指さす彼方に』(革命とエルミタージュの地・サンクトペテルブルグ紀行)を発刊した。
帝国主義戦争に反対して、世界平和を求め、世界で最初に社会保障制度を実現したレーニンの、右手をはるかにさししめす彫像から取った題名である。スターリン以来の政治家の、国民への圧制と覇権主義から、ソ連邦は崩壊したが、現在のロシア国民はどんな生活をしているのかを「家族色のスイス」以来の軽妙で、人にあたたかい目線で描いている。
「エルミタージュ美術館の絵のなかから抜け出してきたかのような色白で整った顔立ちのこの国の人々とこどもたち。いまこの国の人たちは、自国の歴史をどう受け止め、今どんな気持ちで暮らし、どんな未来を見つめているのだろうか。ともに平和で明るい未来を見つめられたらうれしい。」と思いながら、ご主人と駆け巡った旅行記だ。
ロシアの人々との出会いはさまざま、それは「ご一読あれ」だが、どちらかといえば、無愛想なロシア人に、西山さんが語りかけ、ロシア民謡を歌いかけ、ロシア料理の「ビーフストロガノフ」を食べる際に、日本人はライスを食べるといって、「蚤」(Lice)と勘違いされて大笑いしたとか、楽しい話が満載されている。10月革命の拠点となった「スモーリヌイ」に、マルクス、エンゲルスとともに、指さすレーニンの銅像があった。「政治歴史博物館」には、スターリンの絵があったが、牢獄の鉄柵で覆われていた。スタッフの年配の女性に、「国民はスターリンを否定しているのか」と身振りで聞くと、「イエス」とこたえ、「私たちは、3度の革命を経験している。思いはいろいろだ、いまはリッチな人と貧しい人の差が出てきたしね」とこたえたと言う。
ホテルスタッフの、出稼ぎの苦労のにじんだ母娘との対話、市内観光案内バスの切符売り場は、箱番の小屋で、一人の女性が売っていたとか、人々の苦哀がいっぱいなのも日本と同じである。この旅行記は、「世界史の激動をピンポイントで、一手にひきとる形になったロシア」、それも「資本主義か社会主義かの体制選択の舞台」の国で生きてきた人々の複雑な思いに、心寄せてのルポルタージュである。
西山さんは、この旅行に当たり、国民とともに、新しい国民本位の政治を目指す日本共産党の「一員として生きてきたことの意味、これから生きていく上でのさらなる確信をつよめたい」との思いで出かけたと書いている。私は、京都市会議員を辞めた後、長い間「読中」であった資本論を、不破さんの著書を手引きに読みだした。不破さんの「レーニンと資本論」を読んで、社会主義をめぐる歴史や革命論を大枠でつかんだあと、現代の問題として、中国に興味を持った。
私たち、日本共産党は、中国を「社会主義をめざす国」と位置づけて、理論交流を数度にわたって行っている。ロシアにはあまり興味を持たなかったが、西山さんのこの本をきっかけに、ロシアの現代をもう一度つかみ、また、世界中で起こっている変化をもっとつかみたいと思っている。
問い合わせ先はTEL075・722・8512/FAX075・724・9714(西山)。