(4)妊娠で“退職”命じられる
「強要」「勧奨」あれば解雇で法的規制あり
まず、退職と解雇を区別して理解することが重要です。労働者は働くときに労働契約を使用者(会社)と結びますが、それを労働者の方から終了させることを「退職」と言い、逆に、使用者から終了させることを「解雇」と言います。
退職の場合、通常、労働者側の都合になりますので、労働法的保護がないか、弱くなります。これに対して「解雇」は、強い立場の使用者の意向により、労働者が望まない労働契約の終了ですので、解雇事由や手続きなど、多くの点で法的な規制があります。
ご相談の場合、社長が退職を「強要」または「勧奨」したと考えられ、形式上は「退職」ですが、「解雇」か、それと同様に考えることができます。解雇であれば、「妊娠を理由に」した解雇は、「濫用的な解雇」として無効です(労基法18条の2)。
とくに、男女雇用機会均等法(以下、「均等法」と略称)は、「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」とし、事業主が、女性労働者の妊娠、出産、産休取得を理由に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています(9条3項)。とくに、2006年の同法改正で「妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする」という規定(9条4項)が追加されました。
社長は、労働者からの退職という形式であれば、法違反にならないと「悪知恵」を働かせています。しかし、労働者を断れない状況にして退職を強要することは許されません。表面上の同意があっても、それが労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には均等法違反となり、退職強要は無効です。
ただ、実際に社長と対抗するには個人ではなかなか難しいと思います。労働局(国の機関)雇用均等室からの会社への指導、残業代不払いについても労働基準監督署に申告できます。できれば地域労組に相談して力になってもらい、一緒に行動することを勧めます。(「週刊しんぶん京都民報」2008年3月23日付)