(5)休職よりも「退職しろ」
心の健康破壊に法的責任生じる
退職する必要はまったくありません。
会社は使用者として、労働者が健康を壊すことがないように、担当業務量と労働時間に配慮する義務を負っています(労働契約に基づく健康配慮義務)。多くの仕事を受注しておいて、少ない従業員に長時間過重労働をさせることは許されません。
また、労働基準法などの労働法令に基づいて、人間らしく健康に働ける労働条件を保障し、「快適作業環境」を整備しなければなりません。こうした労働契約や労働法令上の義務違反によって、労働者が健康を壊したときには、使用者には重大な法的責任が生じます。
言いかえれば、労働者には「健康に働き続ける権利」があります。この点をしっかり踏まえて対応することが重要です。
まず、労働基準法違反の可能性が大きいです。1日8時間を超える残業には三六協定が必要です。この協定があるか、記載内容も確認して下さい。深夜労働が常態化しているなら、残業が月100時間を超えると推測できます。月45時間を超える残業は、過重労働防止の点から「特別な事情」がなければさせられません。
労働安全衛生法は、過労死予防を目的に残業が月100時間を超え、かつ疲労蓄積が認められるときは、労働者の申し出があれば医師による面接指導を行う義務を定めています。労働行政は、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、働き過ぎによる健康被害を予防するために事業者を指導することになっています。
既に、ストレスで休職されているとのことであれば、労働基準監督署を通じて過重労働改善を会社に指導してもらえます。また、過重労働による健康破壊ということで「業務上の傷病」として労災保険による療養と休業の補償を受けることもできます。労災認定があれば、療養期間中の解雇は禁止されます(労基法19条)。
ご相談の場合、会社に対して、民事的に損害賠償請求も可能だと思います。一人では難しいかもしれませんので迷わず、地域労組や「いのちと健康を守るセンター」に相談して援助を受けてください。(「週刊しんぶん京都民報」2008年4月6日付)