保育園の調理師です。100人の給食を2人で作っており、仕事の負担はかなりのものですが、パートの代替を園長がやめさせてしまい、次の人をいれようともしてくれません。園長は、常に誰かをいじめのターゲットにして、20人ほどの職員をやめさせてきました。理事長に報告した私が、今度は嫌がらせを受けていると思います。園長のやり方はパワーハラスメントにならないのでしょうか、客観的に立証するにはどうしたらいいのでしょうか。(59歳、女性、宇治市)

安全配慮義務を果たしていない

(8)いじめてやめさせる園長イラスト・辻井タカヒロ

 酷い園長ですね。パワハラ問題の前に次の2点が重要だと思います。
 まず、どのような人員体制で仕事をするかも労働条件です。ある業務を2人で担当するという話だったのに1人で担当することになれば、労働の強度や密度を高めないと仕事をこなせません。賃金や労働時間だけでなく人員配置に関連した「労働密度」も労働条件と言えるのです。したがって、使用者が労働密度を一方的に不利益変更することは法的にも重大な問題となります。
 調理師として担当する業務が、パートの代替を前提に行うことが労働契約での合意内容になっているときには契約違反です。契約通りに、担当人員確保を使用者(園長)に求めることができます。通常、個別の労働契約で担当人員などを詳細に規定する例は多くありませんが、調理師業務にはパートの代替要員配置が長年の慣行となっているときなどには、契約内容になっていると主張することが可能です。
 本来は、こうした労働密度に関しては、労働組合があれば、組合と使用者の間で人員配置に関する協約・協定を定めておき、一方的な人員削減(労働条件悪化)に歯止めをかけるのが最も強い労働側の対抗手段となります。
 次に、労働者が人間らしく働けるように配慮するのは使用者の法的責任です。本来、労働契約の前提として使用者には安全配慮の義務がありますが、今年3月施行の労働契約法5条では「労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定されています。園長は、こうした配慮義務を果たしているとは言えませんので、その結果、労働者が過重負担のために身体を壊すことになれば損害賠償などの責任が生じます。
 実際には個人で、このパワハラ的で横暴な園長に対抗することは難しいと思います。福祉保育関連の労組や地域労組で駆け込み相談を受ける組合がありますので、そうした組合に迷わず相談して援助を受けることが最も有効な方法だと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2008年5月4日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。