(9)派遣先でケガ
業務上であれば労働災害と認定
手のケガ、お大事にしてください。
まず、適法な労働者派遣の場合には、(1)主に派遣先事業主が労働安全衛生法などの労災防止の責任を負います。(2)労働災害が発生したときの補償については労災保険法や労働基準法に基づいて派遣元事業主が負担します。しかし、(3)派遣元と派遣先両方に安全配慮義務があることが裁判例などで確立していますので、労働者が労働災害にあったときには、この義務違反を理由に損害賠償責任を追及することが可能です。
2004年3月に製造業派遣が解禁されましたが、派遣元と、一定人数を受け入れる派遣先は専門の責任者を置くことが義務づけられています。また、派遣労働者が仕事中に災害に遭って死亡したり休業したときには、法令によって派遣先事業主は労働基準監督署長に労働者死傷病報告提出することを義務づけられています(労働安全衛生法100条、安全衛生規則97条)。
ご相談の場合、仕事中に手指を痛めたとのことですから、労働災害だと思われます。業務上の災害であれば通常「業務災害」と認められ補償を受ける点では、派遣労働者も一般の労働者とまったく同様です。業務上かどうかは、派遣元や派遣先が認めるのではなく、労働基準監督署長が客観的に認定します。もし労働者に何らかの不注意があっても、業務上認定には関係がありませんので、どのような状況で災害が生じて手指を痛めたのか詳細な事実関係を思い出して書き出して整理しておくことが重要です。
業務災害と認定されれば、労災保険から労働者負担ゼロで治療費全額分が療養補償給付として支給されます。また、休業4日目から休業補償給付と特別支給金として給付基礎日額の80%が支給されますし、最初の休業3日間は休業補償(平均賃金の60%)を派遣元に請求できます(労働基準法76条)。
結論としては、地域労組や労災職業病関連団体に相談し、労災専門の医師を紹介してもらって受診して下さい。業務災害と認められれば、雇用を維持しながら治療を受けることが可能となります。(「週刊しんぶん京都民報」2008年5月11日付)