スーパーのレジ係りとしてパートで働いています。今年の4月からパート法が改正されたと聞きます。何か役立つことがあれば知りたいのですが。(41歳、女性、京都市)

事業主に待遇決定の説明義務を課す

(10)パート労働法〈1〉差別の是正イラスト・辻井タカヒロ

 昨年、パート労働法(正式名称「短時間労働者の雇用管理の改善に関する法律」)が改正され、今年4月1日に施行されています。正社員との差別禁止など具体的労働者保護を求めるILOパート条約採択前に制定された1993年パート労働法はきわめて不十分な規制内容でした。
 パート差別が問題になった丸子警報器事件では8割を下回る賃金は公序良俗違反で無効という判決が出るなど差別是正が課題となっていました。国会では政府案では実効性がなく、格差固定化の危険性があることが問題となり、採決で野党3党は反対しました。
 新法は焦点の差別是正については、職務内容・責任、人事異動の有無・範囲、契約期間が正社員と同じという、きわめて少数のパート労働者(4~5%程度) についてだけ、正社員との賃金、教育訓練、福利厚生などでの差別禁止(均等待遇)を定め、それ以外については実施義務や努力義務にとどまっています。
 確かに、ほとんどのパート労働者については努力義務にとどまる不十分な規制です。しかし、事業主は労働者からの求めがあれば、待遇決定に当たって考慮した事項について説明義務があるとされました(法13条)。パート労働者は、正社員と同じように仕事しているのに何故格差があるのか不満に思うことが多いと思います。事業主が説明義務を負うことになったのはとても重要な改正点だと思います。
 もちろん事業主は労働者を納得させる必要まではないとされていますが、労働者が納得できないときには事業主は苦情処理による自主解決をすることも努力義務化されています。さらに自主解決できないときには労働者は都道府県労働局長に申請して「均衡待遇調停会議」で調停を受ける手続きも定められています。地域労組などの援助を受けて団体交渉で企業に改善を迫るとともに、並行してパート法の諸規定や手続きを活用していくことが有効だと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2008年5月18日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。