(11)パート労働法〈2〉正社員への転換
事業主の裁量から義務化へ
前回、4月から施行されているパート労働法では、差別是正と待遇決定の説明義務が事業主に課されたことをお話ししました。
それ以外では「通常の労働者(=正社員)への転換措置義務」が定められたことが重要です(法12条)。まず、パート労働法の対象は、いわゆるパートタイマー以外のアルバイト、嘱託、契約社員、臨時社員、準社員など名称にかかわらず、「通常の労働者に比べて所定労働時間が短い労働者」はすべて対象になります。
とくに正社員とほぼ同様に、フルタイムで職務内容でも区別なく働いているパート労働者については、事業主は、このパート労働者を正社員に転換するように推進する措置を講じる義務があります。
その他、厚生労働省によれば、(1)正社員の募集内容を既に雇われているパート労働者に周知すること、(2)正社員のポストを社内公募する場合、パート労働者にも応募機会を与えること、(3)パート労働者が正社員に転換するための試験制度を設けるなどが転換措置の例として挙げられ、さらに④正社員への転換推進のために、どのような措置を講じているか、事業所内のパート労働者にあらかじめ広く周知することが望まれるとしています。
これまでパートが正社員になるのは、事業主の裁量に委ねられることが多く、至難のことでした。しかし、パート労働法は、パートに正社員への転換措置を事業主に求めているのです。
実際、企業によってはパートの士気を高めることが必要だとして、数十人、数百人規模でパート社員を正社員にする例も出ていますし、正社員向けの研修をパートが受講できるようにした企業も増えています。
要するに、新パート法は、正社員と同様に働かせながら待遇面などでパートを差別することを許さず、できるだけ正社員にしていくことを趣旨としています。労働者としては自主解決や調停の手続きを活用できます。労働組合は団体交渉によって正社員化しやすい措置を協約で定めることが現実的課題となっているのです。(「週刊しんぶん京都民報」2008年5月25日付)