役所の非常勤嘱託として働いて5年になります。正規職員と同じ仕事をして、移動してきた正規職員には、私が仕事を教える事もあるのに、身分は不安定のままです。毎年年末には、雇い止めにならないか心配です。(42歳、女性)

「任用」制度の壁くずす判決出る

(15)雇い止めに不安イラスト・辻井タカヒロ

 非正規公務員は日本だけに見られる異常なものです。雇用や労働条件を保障せず、政府や自治体が、率先して不安定雇用とワーキング・プアを生み出しているからです。
 従来、民間企業で短期契約が反復更新されている場合、突然の更新拒絶(雇い止め)は解雇と同様に合理的理由がなければ無効とする判例が確立しています(東芝事件・最高裁1974年7月22日判決)。ところが、公務員の場合は「任用」制度が理由となって雇用継続が認められず、非正規公務員救済の大きな壁になっていました。
 最近になって、この壁を崩す判決が出されてきました。一つは、国立情報学研究所に13年11カ月も非常勤職員として働いてきた女性が、突然雇い止めされた事件で、東京地裁は2006年3月24日の判決で、任用更新拒絶は信義則に反し許されないとして雇用継続を認めたのです。判決は「任用を打ち切られた職員にとっては、明日からの生活があるのであって、道具を取り替えるのとは訳が違う」として、濫用的雇い止めを許しませんでした。上級審で逆転されましたが、画期的判決でした。
 同様に、中野区非常勤保育士事件で、東京高裁は2007年11月28日注目すべき判決を下しました。恒常的な仕事に9回~11回再任用され、10年前後の長期間勤務してきた非常勤保育士は、「再任用が形式的でしかなく、実質的には当然のように継続していた」とし、「任用継続に対する期待は法的保護に値する」と判断しました。そして、民間のように雇用継続を命じることができない公務員法の整備が必要とされるとまで指摘しました。報酬の1年分に相当する慰謝料額を認めたのです。その後、保育士たちは労組の支援を受けて区と和解して職場復帰できました。高裁で現行制度へ強い批判が示されたことは重要です。
 いま、自治体関連の労組が非正規問題への取り組みを強めています。そうした労組と連絡をとり、理不尽な雇い止めがあったときには決して泣き寝入りせず、「働き続けたい」と声をあげていくことが必要です。(「週刊しんぶん京都民報」2008年6月22日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。