「日雇い派遣」会社に登録し、ときどき引っ越しの仕事などをしています。夏休みなど、時間が空いた時にお小遣いかせぎで働けるので便利でした。最近、ニュースや新聞で「『日雇い派遣』は原則禁止にする」と国会で話し合われていると聞きました。「日雇い派遣」という働かせ方は、どういう点が問題なのですか?(20歳、男子学生、長岡京市)

同一労働同一待遇が労働法の基本ルール

(17)日雇い派遣の問題点イラスト・辻井タカヒロ

 「日雇い派遣」は、90年代後半以降、急速に増えてきた最悪の劣悪・不安定雇用です。グッドウィル、フルキャストなど最大手日雇い派遣会社が、禁止業務派遣、二重派遣など違法行為をしていたことを理由に許可取消や事業停止処分を受けました。根拠不明の賃金天引き、労働・社会保険不加入も指摘され、低賃金・不安定・劣悪労働としてワーキングプアの受け皿になっています。
 99年派遣法改正で、派遣業務が原則自由化されました。専門性のない単純作業にも派遣が拡大されました(製造業務は04年3月から解禁)。これが、日雇い派遣が広がる直接のきっかけです。
 労働側の強い反対があって新たに自由化された業務での派遣受入期間は上限1年とされました(現在は、上限3年)。ただ、改正前の26業務など一定業務については期間制限なしに派遣を受け入れることができるとされました。その中に「日数限定業務」があります。つまり、「1か月間の業務日数が、派遣先正社員の所定労働日数に比べて相当程度少なく(半分以下)、かつ、月10日以下である業務」です。スポット派遣とも呼ばれるもので、これが、日雇い派遣が広がった、もう一つの理由です。
 85年制定の派遣法は、常用型派遣以外に、派遣先で労働者が仕事をする期間だけ、派遣元が労働者を雇用する「登録型派遣」を認めてしまいました。登録型は、派遣が終わって次の派遣までの空白期間の雇用や賃金保障がなく、派遣先や派遣元は経済的負担や解雇の責任を負わずに済みます。企業にとってはきわめて便利ですが、労働者には不安定で保障のない働き方です。日雇い派遣は、登録型の弊害を局限にまで拡大し、明日の仕事の保障すらありません。派遣先に雇われる職業紹介でもなく、実態は、職業安定法44条に違反する労働者供給事業に近いと言えます。日雇い派遣を放置してきた政府の責任は重大です。早急に廃止して無権利な労働者を保護することが緊急の課題となっています。(「週刊しんぶん京都民報」2008年7月6日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。