(20)時給引き下げ
合意なく一方的な引き下げできない
賃金は重要な労働条件です。労働者の合意なく一方的に引き下げることはできません。賃金の決定は、技能、資格、経験・経歴などの合理的な要素に基づくべきです。現在の時給が900円となっている根拠を文書で確認して下さい。ご相談の場合、労働条件の不利益変更ですので、会社側には、その合理的理由について、誠実に説明する義務があります。
まず、賃金関連文書を確認する必要があります。使用者は労働者に対して、(1)賃金の決定、(2)計算・支払方法、(3)締切り・支払時期、(4)昇給について明記した文書の交付を義務づけられています(労働基準法15条)。また、労働者10人以上の事業場では、就業規則で統一した賃金関連規定を定める必要があります。こうした賃金関連文書がないのであれば、それ自体が法違反となります。
次に、正確な雇用形態が分かりませんが、「短時間労働者」(パート、アルバイト等)だと推測します。そうすると、「パート労働法」(今年4月から改正法施行)を活用して対抗することも考えられます。同法では、事業主は、賃金を通常の労働者との均衡を考慮しつつ決める努力義務があります(9条)。とくに、労働者が求めたときには、賃金の決定にあたって考慮した事項について、労働者に説明しなければなりません(13条)。労働者は、その説明に納得できないときには、(1)事業所内での苦情自主解決と(2)労働局での解決を求めることができます。まず、事業主は苦情を自主的に解決する努力義務があり、「短時間雇用管理者」を置いて労働者からの相談に応ずることも求められています(15条)。さらに、(2)都道府県の労働局(国の機関)に指導・助言等を求めたり、紛争調整委員会での調停を申請することもできます(21条、22条)。
できれば一人で悩まず、地域労組などに相談して下さい。労組と一緒の交渉で初めて対等に話し合いができ、会社側が、誠実に対応して不利益変更を取り下げるに至った事例もあります。(「週刊しんぶん京都民報」2008年8月31日付)