パソコンのメンテナンスなどをする仕事をしています。仕事をする時はパソコン大手企業の名札を付け、そこの社員のように働いていますが、実は別の会社から来た派遣社員です。数カ月単位の派遣契約で、1年のうち2、3カ月仕事のない月もあり、収入が不安定です。正規で働きたいのですが、派遣から正社員になった人はほとんどいません。派遣から正社員になることはできないのですか?(31歳、男性、八幡市)

派遣受入期間確認が必要

(23)正社員になれない?イラスト・辻井タカヒロ

 1985年の労働者派遣法は、派遣期間終了後、派遣社員が派遣先に雇用されることを制限していません(同法第33条)。しかし、「派遣業務限定」方式を採用したこともあり、派遣期間の限定は不明確でした。99年改正で業務が原則自由化され、派遣受入期間が、(1)従来の「26業務」と、(2)「それ以外の業務」に大別されました。(1)は受入期間の制限がありませんが、(2)は受入期間が上限1年となりました。さらに03年改正で、「1年から3年(上限)」に期間が延長されています。
 (2)の場合、派遣先職場で同一業務での派遣受入は3年までです。派遣先はこの上限を超えて継続して業務担当させる場合、直接雇用が必要となり、派遣労働者に雇用契約を申込む義務があります(派遣法第40条の4)。なお、(1)の場合でも、派遣先が当該業務で新たに社員を雇うときには3年を超えて働いている派遣労働者に雇用契約を申込む義務があります(同法第40条の5)。
 ご相談の場合、「パソコンのメンテナンスなど」が担当業務ということですが、(1)か(2)かを確認する必要があります。名目は(1)の業務でも(2)の業務を1割以上担当するときには(2)と見なされます。詳細について労働局に問合わせをして下さい。
 次に、「大手企業の名札を付ける」ことからは、違法な「二重派遣」の可能性が考えられます。関係者の間でどのような契約や、就労の実態があるかがポイントです。受入企業は、パソコン大手企業との間で「請負(業務委託)」契約を結んでいると推測できますが、受入企業上司が直接に業務指示や時間管理をする実態があれば「二重派遣」となり、職業安定法第44条違反となります。偽装請負の違法派遣をめぐる裁判で、今年4月、派遣先との直接雇用関係成立を認めた判決が出て注目されています(松下PDP事件・大阪高裁判決)。
 派遣法の規制は複雑ですが、逆に企業側の法違反も多いと言えます。地域労組を通じて、派遣問題の専門家の援助を受けて下さい。知識を蓄えながら事実関係を整理しつつ問題提起することが必要です。(「週刊しんぶん京都民報」2008年10月12日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。