(24)有給休暇で給料?
労働者の権利を失う必要はない
ご相談のように、有給休暇が残っていれば、休暇手当が賃金100%相当ですので、実際、これを使う派遣社員の方が多いと思います。しかし、有給休暇は、労働日に賃金相当額の支給を受けながら、労働義務から解放される(=休める)という労働者の権利です(労働基準法39条)。工場の仕事が減って休みが増えたのは、労働者には何の責任もなく、「使用者の責(せめ)による休業」と言えます。本来なら、この休業については使用者に100%責任がありますので、労働者の大切な権利である有給休暇を消化する必要はありません。
工場ラインの仕事が減って働く機会を与えることができないのは使用者側の都合です。使用者が義務を果たしていないのですから、労働者が賃金を失うことはありません。法的には、使用者の責による休業の場合、労働者は、同等以上の仕事を代わりに求めることができます。使用者が代わりの仕事を保障できない場合、労働者は、本来、働いて受け取れるはずの賃金相当額(100%)を請求できるのです(民法536条2項)。
さらに、労働基準法26条は、使用者側の事由による休業の場合、休業中、「休業手当」(平均賃金の100分の60以上)を支払うことを使用者に義務づけています。休業手当の支払いがなければ、労働基準監督署に申告することができますし、罰則もあります。ただ、この「平均賃金」は、休業前3カ月にもらった賃金総額を、3カ月の暦日数(土、日を含む日数)で割ったものです。派遣社員の場合、正社員なら受け取れる各種手当がないことが多いので、暦日数で割ると不利な計算になってしまい、日給額よりかなり少なくなります。そのまた60%の休業手当は実感としては日給額の40~50%程度にしかなりません。
そこで最近、地域労組などの援助を受けて団体交渉をすることで、有給休暇をとることなく、会社に賃金相当額(100%)を休業期間中に支払わせたという事例が増えています。(「週刊しんぶん京都民報」2008年10月26日付)