工場で時給900 円でアルバイトをしています。2年以上働き、その現場でリーダーを任されるようになりました。他の工場から移ってきた正社員の人に仕事を教えているような状況です。私と同じような仕事をしている正社員もいます。正社員と比較すると給料は月5万円以上安く、ボーナスもなく、契約は一年更新で将来どうなるかわかりません。この待遇は納得いかないので、改善できませんか?(27歳、男性、京都市)

労働法の大原則同一労働同一待遇

(27)正社員より5万円安いイラスト・辻井タカヒロ

 アルバイトやパートも法的には「労働者」として労働基準法などが適用されます。「同一労働同一待遇」は労働法の大原則ですので、アルバイトであっても正社員と同様か、それ以上の仕事をしていれば、それに対応した待遇を求めることができるはずです。
 現行労働基準法は、使用者(会社)に対して、国籍、信条、社会的身分を理由に賃金などの労働条件での差別的扱いを禁止しています(第3条)。数十年前には、「社会的身分」は「生来の(生まれながらの)身分」であるから、アルバイトや臨時工は「社会的身分」に当たらないとする解釈が有力でした。
 その後、非正規雇用が拡大するなかで、正社員と同等以上の労働をしていても数分の一の賃金といったひどい差別は、法的正義に反するものと意識されるようになってきました。丸子警報器事件では、長年にわたって正社員と何ら変わらない仕事をしていたパート労働者について、裁判所は、パートの賃金が「正社員の8割を下回る場合は公序良俗違反で無効だ」とする画期的判決を下しました(長野地裁上田支部1996年3月15日判決)。
 この判決やILO条約を踏まえて「パート労働法」が改正されました(2008年4月施行)。短時間労働者であれば適用対象となります。職務内容などが正社員と同視すべきパート(その範囲は狭い)については正社員との差別待遇が禁止されます(8条)。とくに、労働条件決定の根拠などを説明する使用者の義務が定められました。仕事に比べて時給が低いなど、納得できない点があれば、その理由の説明を使用者に求めることができま
す(13条)。
 ただ、間接雇用の派遣社員の場合、形式では派遣元社員ですので、使用者が派遣先社員と違うことから、パート等の場合とは違って均等待遇を法的に争うことが困難です。しかし、世界の派遣法では、派遣社員と派遣先正社員でも同一労働同一待遇が原則です。現在、こうした均等待遇を明記させることが、派遣法改正での重要課題となっています。(「週刊しんぶん京都民報」2008年12月7日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。