(34)始・終業前にも働く
記録に残して、未払い分請求
アルバイトも労働基準法(労基法)が適用される労働者です。労基法では、労働者が使用者の支配下にある時間を労働時間と言い、この時間について使用者(会社)は賃金を支払わなければなりません。労働時間は実際の時間をすべて算定します。労働契約や就業規則に書かれた労働時間(所定労働時間)やタイムカードに記録された時間は、実際の労働時間を推定する手がかりと考える必要があります。
ただ、労働時間を厳密に1秒単位まで算定することは事実上困難ですので、労働行政は現実的なところで1分単位での算定を求めています。タイムカードが30分刻みであれば、29分以下が算定されないので法違反となります。労働者としては、算定されない労働時間については、できるだけ記録を残して未払い賃金をさかのぼって請求するための準備が必要です。
また、「10分前に来い」というのは、始業時刻前の就労(早出:時間外労働)を指示することになります。労働契約や就業規則などの法的根拠なしに、使用者が一方的に早出を命じることはできません。労働者が実際に就労したら、これを労働時間として算定しなければなりません。
もし原則として、法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超えるときには労基法32条に違反します。
例外として同法36条に基づく労使協定が必要ですし、同法37条に基づいて25%以上の割増賃金の支払いが必要です。未払い分は過去にさかのぼって請求できます。ただ、時効がありますので、会社が主張すれば2年を超える前の分は取り戻せません。
以前の相談では、タイムカードを押した後でもパソコンが実際に終了するまで、アルバイトがガソリンスタンドを閉めて帰ることができませんでした。結局、帰るまでの時間は賃金未払いだと申告したところ、労働基準監督署が入って、その指導に基づき過去にさかのぼって未払い分の賃金支払いがされています。今からだけでなく、過去の分も思い出して記録にまとめ、請求の準備を始めて下さい。(「週刊しんぶん京都民報」2009年3月22日付)