一年契約で大学のアルバイト職員をしています。社会保険や雇用保険には入っておらず、来年、失業した時が不安です。雇用保険法が改正され、加入する人が増えると聞きましたが、私にも雇用保険が適用されるようになるのですか?(25歳、女性、亀岡市)

脱法的な期間設定の疑いあり

(33)保険に入ってないイラスト・辻井タカヒロ

 一般に民間事業所で働く労働者は、社会保険(健康保険と厚生年金保険)と労働保険(労災保険と雇用保険)の適用を受けます。労災保険の保険料は全額事業者負担ですが、他は労働者も保険料を負担して「被保険者」となります。社会保険は会社などの「法人」は例外なく適用されます。大学の場合、私立も国公立も社会保険・労働保険の適用事業所ですが、正規教職員は健康保険と厚生年金保険には加入せず、別制度の「共済組合」に加入しています。
 現在、各大学には1年契約、1日6時間未満で働く、アルバイト職員が相当数いますが、社会保険や雇用保険の適用を受けていません。なぜなら、雇用保険では、(1)1年以上の雇用の見込みがあること、(2)所定労働時間が週20時間以上が加入要件です。1年契約では(1)の要件を満たさないので加入させなくてよいことになります。
 他方、健康保険や厚生年金保険では、(a)適用事業所での使用、(b)2カ月以上の雇用、(c)労働時間が通常の労働者の4分の3以上、が加入要件です。ただ、(c)は明確な法令上の根拠がなく、単なる行政運用に過ぎません。
 1年契約のアルバイト職員は、臨時的業務ならともかく、多くが恒常的業務に就労していることを考えると、1年という契約期間に合理的理由はありません。むしろ、雇用保険の加入要件の隙間を利用した脱法的期間設定の疑いがあります。
 現在、政府は雇用保険法改正案を国会に上程しており、その中には加入要件を緩和して「1年以上の雇用の見込み」から「6カ月以上の雇用の見込み」へという適用範囲の拡大が含まれています。その限りでは1年契約のアルバイト職員も適用対象になります。
 しかし、大学側が雇用保険適用を避けるために、1年契約が6カ月契約にする可能性があります。これでは適用を拡大しようとする法案の趣旨に反します。当面、こうした悪質な対応を許さない法改正が必要ですが、職場でもアルバイト労働者のために労働組合が声をあげるべきだと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2009年3月8日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。