(36)損害賠償させられる
法で厳しく禁止されている行為
法的に許されない仕組みですし、労働基準法違反ですので監督署に申告することができます。
まず、アルバイトも「労働者」として労働基準法などで保護されます。仕事のうえでミスがあっても、労働者の責任とは言えません。事前の教育・訓練や人員配置など、使用者側に管理責任があると考えられます。
それにもかかわらず、一方的に、会社に損害が生じたのは労働者の責任だとして損害額を給料から差し引くことは許されません。
損害発生が労働者の責任だというのであれば、使用者は被害者として裁判所に訴えを起こす必要があります。客観的な第三者である裁判官に、故意・過失(注意義務違反)の責任が本当に労働者にあるのか、損害額が実際にはどれくらいか等、証拠となる事実を証明し、公正な判断に基づいて労働者に賠償を命じる判決を出してもらうことが必要です。
使用者にも責任があるのに、強い立場を利用して責任を労働者にだけ押し付けることは許されません。とくに、民事裁判の手続きを踏まずに、損害額を勝手に決めて給料から差し引くことは、法的には「自力救済(じりききゅうさい)」と呼ばれ、現行法の基本原則に反した厳しく禁止されるべき行為といえます。
さらに、労働基準法24条は、賃金全額払いの原則を定めています。もし民事裁判を経て労働者に損害賠償が命じられるときでも、給料から損害額を差し引くことはできません(最高裁1961年5月31日判決)。
さらに、労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めています。雇われるときに契約書や念書で、ミスがあったときに労働者側の賠償予定を定めたり、違約金を約束させることは禁止されます。
そうした約束自体が無効ですし、違反があれば「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という厳しい罰則も定められています(119条1号)。(「週刊しんぶん京都民報」2009年4月19日付)