(38)不況理由に勤務減
派遣元はフルタイム就労させる責務あり
本来の労働契約通り、フルタイムでの就労を求めることが基本です。それが不可能なら減額した賃金相当額を請求できます。
派遣先が主たる当事者のように思えますが、派遣労働関係では、派遣元と派遣先の間に「労働者派遣契約」が結ばれ、労働者と派遣元との間で労働契約が結ばれます。派遣先は実際に指揮命令しますが、労働者との間には特別な契約関係を結ばず、雇用責任を負わないというのが「適法な派遣」の建前です。
そこで、労働者としては第一次的には派遣元に対して責任追及をすることになります。労働契約に基づいて、週5日のフルタイム就労をさせるように派遣元に労働契約上の義務を果たすように求めることができます。
不況だからという理由で、派遣先が週3日の出勤に変えても、それが労働者と派遣元との間の契約を変えることにはなりません。派遣元は、労働契約に基づいて週5日のフルタイム就労をさせる義務を労働者に対して負っているからです。
また、事務関係では登録型派遣が多いのですが、これは「期間を定めた契約」(短期契約)を結ぶものです。この場合、契約期間中に労働契約を不利益変更することは余程の事情がなければできません。「不況だから」といった曖昧な理由での変更は認められません。
まず、働けなくなった週2日分について、契約通りの就労を求めて下さい。それができない場合、派遣元に対して本来働いていれば受け取れたはずの賃金相当額を請求できます。契約違反の損害賠償か、危険負担(民法536条)の考え方が根拠になります。
無責任な派遣先に対しても何らかの対抗措置が考えられます。ハラスメントや差別的扱いなど特別な事情がなければ、派遣法上は派遣先への責任追及は難しいのが現実です。
ただ、キャノン(大分)のように、地域労組などが団体交渉や社会的に企業責任を追及した結果、派遣先として解決金の半額を支払うことになったという事例(2009年4月)も現れています。(「週刊しんぶん京都民報」2009年5月17日付)