“大地震と若狭湾原発群事故の同時進行でも複合災害のリスクはかなり少ない”、“琵琶湖の放射性物質は大量の湖水で薄まる”―こんな見解を、京都市防災対策総点検委員会が「中間報告」でまとめていることが分かり、市民、専門家から「原発事故への認識を疑う」と批判の声があがっています。

避難者の願いに応えて

福島市から京都市に避難 高橋千春さん

 福島第1原発事故直後、2歳の子どもを連れ、妊娠8カ月の体で福島市を離れ、京都市へ避難してきました。6月に出産し、今は親子3人暮らしです。夫は、仕事があるため地元に残りました。
 自宅は原発事故直前、新築したばかり。住宅ローンや夫と別々の2重生活による経済的負担、一家離ればなれの精神的負担に、落ちこんでばかりいました。それでも、放射能から子どもの命を守りたいと避難生活を続けています。
 先日、京都市の「中間報告」のことを知りました。原発の安全神話は完全に崩れているのに、京都市内で地震が発生しても福井の原発事故が起こるリスクは少ないなどと書かれていて、驚きました。京都市は、福井原発から約60キロ。福島市と福島第1原発との距離とほぼ同じです。あの事故以来、福島市民が払った犠牲ははかり知れません。
 私たち避難者の願いは、一刻も早く原発の稼働を中止し、原発をなくすことです。京都市の「中間報告」は、原発稼働が前提です。行政は、市民の命を守る責務があります。勇気を持って脱原発を宣言してほしい、その上で、必要な対策を講じてほしいと思います。京都市へ避難してきた私たちの切実な願いです。

「中間報告」
 同総点検委員会は、東日本大震災・福島第1原発事故を受けて市防災計画を見直すため、行政関係者や学識経験者28人が参加して6月22日と8月29日の2回開催。第2回委員会で「中間報告」をまとめ、市に提出しました。
 中間報告は、「原子力発電所事故等に関する対応」について、「今後、京都市域で大規模地震が発生し、同時に若狭地域の原子力発電所で事故が起こって、福島第一原子力発電所で起こったような複合災害が起こるリスクはかなり少ないというのが、原子力の専門家の見方である」「琵琶湖の水の放射性物質による汚染に関しては、仮に琵琶湖方面へ放射性物質が飛散したとしても、琵琶湖の水量が非常に多いため、水中で希釈される」などとしています。(詳しくは「週刊しんぶん京都民報」2011年9月11日付)