インターネット回線契約の営業をやっています。個人宅を回ってネットを引いてもらうことをお願いしているのですが、なかなか契約が取れません。うちの会社の給料形態は歩合制で、回線の契約が月10件以下なら基本給が減らされてしまいます。契約ゼロなら8万円も給料が引かれるのですが、こんなことは許されるのですか?(32歳、男性、長岡京市)

労基法に一定額の賃金保障を定める

(40)歩合制で給料減イラスト・辻井タカヒロ

 まず、労働基準法第27条は、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定めています。仮に契約成立などの成果がゼロでも一定額を保障しなければならず、違反には30万円以上の罰金が適用されます。
 この保障額は、「通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入」額で、平均賃金(過去3カ月の収入を土日などの休日数を含む総日数で割った額)の6割以上とされています(行政解釈)。
 次に、労基法では法定時間以上の労働や法定休日の労働は原則禁止されています。36協定の手続きをとったときは例外ですが、割増賃金を支払う必要があります。1週40時間、1日8時間を超える労働は25%以上、法定休日労働は35%以上、午後10時から午前5時までの深夜労働は25%以上の割増賃金が必要です。歩合給であっても、割増分を含む最低額以上を支払わないと法違反となります。
 仮にある月の契約数による歩合給が20万円で200時間労働であったとすると、割増賃金算定基準賃金は1時間1000円です。時間外労働が20時間、休日労働が8時間、深夜労働が4時間であれば、1000円×0.25×20時間+1000円×0.35×8時間+1000円×0.25×4時間=8800円の割増賃金が必要です。
 こうした割増賃金の支払いを逃れるために、会社が事業場外労働の「みなし労働時間制」をとっている可能性があります。その場合でも、携帯電話での逐一の指示や報告義務があれば、「みなし労働時間」は認められません。
 なお、給料が低い場合、保障給以上が支払われていても、最低賃金額(京都府の場合、現在、時給717円)を下回ることは許されません。受け取った給料額を実際の労働時間数で割った額が最低賃金額を下回るかどうかを確認して、もし、下回るときには最低賃金額との差額の支払いを会社に請求することができます。(「週刊しんぶん京都民報」2009年6月14日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。